見逃されがちですが、森林は私たちに必要不可欠な職も与えています。世界銀行によれば、林業部門は既に世界全体で5,400万人以上に職を提供。アメリカの研究では、100万ドルの投資を森林再生や持続可能な森林管理に行った場合、化石燃料への同額の投資に比べ、7倍以上もの雇用を創出できるとされています。16億近い人たち、つまり世界人口の25%以上が森林資源によって生活を支えられており、その大部分である12億人が農場で木を利用して食料と現金を得ています。
2030年までに樹木1兆本を保全、再生、育成するプラットホームが登場
今年1月に開催された、世界経済フォーラムの第50回年次総会において、政府、企業、市民社会、草の根運動などのリーダーたちの支援のもと、「1t.org」による「1兆本の樹木プラットホーム」を立ち上げたのも、こうした背景があったからこそ。1t.orgは、2030年までに樹木1兆本を保全、再生、育成するためのグローバルなプラットホームで、その目的は、数百万人規模のグローバルな森林再生コミュニティを活性化、支援し、人々を結集させ、その潜在能力を解き放つこと。大きなスケールと素早いスピードで、樹木1兆本を10年内に確実に保全、再生できるよう、コミュニティの活動を支援しすることを目的としています。
このようにして1t.orgは、国連食糧農業機関(FAO) と国連環境計画(UNEP)が先導する「国連生態系回復の10年 2021~2030」に大きく貢献することを目指しています。
世界の気候問題と持続可能な開発の解決策として、森林再生が特に重要なのは周知の通りです。そして、森林再生を支えるためには、産業の脱炭素化に向けた野心的な取り組みと、今ある森林の保護・保全が必要であると広く理解されています。さらに、それらは環境に責任のあるやり方で、一体となって進める必要があるのです。こうしたことを実行し、森林再生を経済、社会および政策の課題の最優先事項に加えれば、10年後、アースデイ60周年の日には、「受け渡しの10年」の成果を祝うことができるでしょう。そして、その10年の間に、人類は自然の再生が誰にとっても必要なことだと受け入れているはずです。
新型コロナウイルスの惨禍を乗り越える中で、私たちは、これまでとは違う環境に配慮した成長のパラダイムへ転換できるかもしれません。それは、人の健康を取り戻すための必然的手段として、健全な地球環境を再生するという考え方です。健全な地球なくしては、健全な社会や経済は存在できないのです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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