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2020.05.06 07:30

医療関連業界のグローバルな技術革新、投資家の狙いどころは


ヘルスケア分野のイノベーションは、もはや国境がなくなっている点で、他分野と一線を画している。これは、グローバリゼーションの勢いが押しとどめられようとする昨今の流れにあえて逆らうような力強い動きであり、人類全体、とりわけ投資家に恩恵をもたらすものでもある。

ライフサイエンス分野の国境なきイノベーションの好例が、ポリマーを用いて体内組織を修復する技術を開発する、フランスのTissiumという企業だ。このポリマー自体は、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームによって開発されたものだ。その臨床分野への応用は、今や米食品医薬品局(FDA)の認可を待つばかりとなっている。

Tissiumは、FDAの認可が下り、売り込むべき製品ポートフォリオが揃ったあかつきには、株式公開を計画している。現時点では、同社はフランスのBNPパリバ(BNP Paribas)をはじめとする、ヨーロッパおよびアジアの投資家から資金提供を受けている。これらの投資家は2019年11月、Tissiumに対して、4200万ドルの追加投資を行った。

Tissiumのクリストフ・バンセル(Christophe Bancel)最高経営責任者(CEO)は、「イノベーションは今やグローバルだ」と述べる。バンセル自身も、分子生物学を専門分野とするエンジニアだ。2013年にTissiumを立ち上げると、パリとボストンにオフィスを構え、現在は米国を売り込みの第一のターゲットと考えているという。「(米国は)世界最大の市場であり、常に私たちの計画の中心にあった」とバンセルは語る。

Tissiumが用いるポリマーは、プラスチックに近い合成素材で、複雑な分子構成によって形成される。同社の目標は、組織修復において、患者にとって苦痛が少なく、より速い革命的な技術を実現することだ。

このポリマーの応用例のひとつが、漏れが多い外科手術時の縫合糸に取って代わる、新たなシーラント材だ。この素材は体内で、動脈の穴を塞ぐのにも使えるという。加えて、損傷した神経の補修にも使用可能だ。「我々の開発するポリマーは、体内に埋め込むことで細胞を結びつけ、手術後の身体の回復を助けることができる」と、バンセルは解説する。

米国で開発された新技術が、フランスで製品化され、全世界で販売される。このTissiumの例のように、医療技術は、国境を超えて進化していくことが当たり前になっているようだ。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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