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Tada Images / Shutterstock.com

突然だが、読者のみなさんにひとつお尋ねしたい。医療関連のイノベーションの発信地といえば、どこが思い浮かぶだろうか? 

これまでの常識からすると、一般的な答えは米国だろう。確かに米国は、画期的な新技術を数多く生み出してきた。バイオテクノロジー関連の新興企業に対して積極的に投資を行うベンチャーキャピタルも以前から存在し、これが世界の他の国々と比べて有利な点になっているのも事実だ。だが今では、他の国、特にヨーロッパ諸国の追い上げが著しい。

投資家にとって、この点は重要だ。なぜならヘルスケア部門は、株式市場において、他を圧倒するパフォーマンスを見せているからだ。4月24日までの12か月間で、S&P 500ヘルスケア株指数は15.6%と、セクター別の上昇率で最高値を叩き出した。これは、何かと注目が集まる情報技術部門の12.6%を軽く上回る数字だ。

幸い、ヨーロッパ発のライフサイエンス系企業の株式は、その多くが米国の市場で取引されている。こうしたヨーロッパの大手企業としては、英国のアストラゼネカ(AstraZeneca、多くのがん治療薬を研究開発パイプラインに擁し、株価は前年比で31%上昇)、スイスのノバルティス(Novartis、心不全および乾癬、株価は10%上昇)やロシュ・ホールディング(Roche Holding、各種のがん、21%上昇)、そしてデンマークのノボ ノルディスク(Novo Nordisk、注射剤、10%上昇)などが挙げられる。

以前であれば、米国は医療分野におけるイノベーションで圧倒的な地位を占めていた。しかし、研究開発が急速に進展するなかで、その活動はもはやひとつの国にとどまるものではなくなっている。米国のベンチャー投資家も、ヨーロッパのバイオテクノロジー企業に目を向ける傾向が強まっている。ヨーロッパの企業は、自国大学の強固な研究体制からも恩恵を得ているうえ、ヨーロッパでも、独自のベンチャーキャピタルによる投資が進みつつある。

ゆえに、ヨーロッパではバイオテクノロジーのルネッサンスが進行中だ。医療分野におけるイノベーションの進展と人口の高齢化により、ライフサイエンス系企業の製品の需要は高まっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法およびワクチンの開発に向けた取り組みも、これらの企業の投資適性をより一層上昇させるものだ。

さらに、潤沢な資金を持つヨーロッパの非医療系巨大企業が、ヘルスケア分野に進出する動きも盛んになっている。その一例が、自動車部品の製造で最もよく知られるドイツの機械メーカー、ロバート・ボッシュ(Robert Bosch)だ。

同社のヘルスケア部門であるボッシュ ヘルスケア ソリューションズ(Bosch Healthcare Solutions)が開発した分析装置「Vivalytic」は、これまでインフルエンザや性感染症の検査に用いられてきたが、新型コロナウイルス感染症の検査にも使用できるようになったと2020年3月に発表された。この装置を用いた場合、2時間半以内で検査結果が判明するとして、同社は検査の迅速性を謳っている。

さらに、ヨーロッパのヘルスケア系巨大企業は、米国でさまざまな企業の買収にも乗り出している。2009年にはロシュが、遺伝子組み換え分野ではパイオニア的存在の米国のベンチャー企業、ジェネンテック(Genentech)を買収した。また、アストラゼネカは2015年、腎疾患および心臓血管系疾患の治療薬を専門とするバイオ医薬品企業、ZSファーマ(ZS Pharma)を傘下に収めている。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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