パンデミックの影響で、米国の母子家庭に降りかかる困難

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新型コロナウイルスによる不景気で主に犠牲を強いられるのは働く女性たちであり、働く男性が大きな打撃を受けた前回の不景気とは逆であることが、全米経済研究所(NBER)による新しい研究で明らかになった。

研究報告書によると、「社会的距離戦略(ソーシャル・ディスタンシング)に起因した雇用の減少は、労働者に占める女性の割合が高い業界に重大な影響を与えている」という。

最も懸念すべき存在として報告書が注意を呼び掛けているのは、母子家庭の子どもたちだ。こうした子どもたちは、18歳以下の未成年全体の21%を占めている。学校が長期にわたって閉鎖されれば、母親は働きに出られず、貧困に陥るおそれがある。

報告書は、米国にいる1500万人のシングルマザーが、誰よりも深刻な影響を受けると予測する。新型コロナウイルス危機が続くあいだは、ほかに子どもの預け先を見つけることが難しく、働き続けられる可能性が低いためだ。

とはいえ、働く女性たちを支えるべく、助けの手が差し伸べられようとしていると報告書には書かれている。

多くのビジネスが、保育を必要とする従業員について以前よりもずっと認識を高めており、柔軟性のある勤務スケジュールを導入したり、在宅勤務が可能な体制を急遽整えたりしながら対応していると報告書は指摘する。

さらに、子育てを主に担うことになった父親が多い点にも言及している。それにより、家事や子育てにおける労働配分の不均衡を招いてきた社会規範が崩れていく可能性があるという。

報告書によれば、働く母親にとって問題は深刻化している。多くの保育所は閉鎖を余儀なくされ、これまでの頼みの綱として、子守を頼めるはずだった祖父母や親戚、知人隣人などに子どもを預けることは避けるよう呼びかけられているからだ。あるいは、新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした外出禁止令が出ており、預けることができない。

現在の危機では、子どものいない働く女性たちもまた、男性より不利な立場に立たされている。女性は男性と比べて、遠隔勤務が可能な仕事についている人が少ないのだ。報告書によると、遠隔勤務が可能な仕事の割合は、女性は22%だが、男性は28%となっている。

「新型コロナウイルス危機では、女性よりも男性のほうが、勤務環境の変化に適応しやすいだろう。裏を返せば、女性のほうが失職する可能性が高い。これは、通常の景気低迷時のパターンとは逆である」と報告書は述べている。

報告書では、危機の最中ならびに終息後に、働く女性の失職を防止し、家族の生活水準を維持するために政府が講じられる対策を、いくつか提案している。

1.危機のあいだに学校や保育所が閉鎖され、子どもを預けられず労働者が働けなくなった場合は、雇用関係の継続(つまり、終息後に労働者がすぐ仕事に戻ること)を条件に、労働者の給与を肩代わりするための補助金を給付する。

2.学校や保育所が再開するまで、貧困家庭一時扶助(Temporary Assistance for Needy Families:TANF)やメディケイド(低所得者向け公的医療保険)といった政府の支援プログラムの受給対象となれるよう、就労要件について一時的に留保する。

3.同期間中、失業保険の受給要件から、「積極的に求職活動を行っている」という項目を外す。

4. 子どもの世話をするために自主的に仕事を離れた労働者に対しては、失業保険の受給期間を延長する。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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