2. 「料理禅」で心を整える
自宅で仕事をしていると息がつまることがある。うまくアイデアがまとまらなかったり、つまらないことでいらいらしたりすることも、もちろんある。そんなとき、瞑想やヨガをするのもいいが、それと同等の効果があると私が信じているのが料理だ。
けっして私は器用なほうではなく、いまでも野菜の皮むきやカットには苦労する。しかし、それでもいいのだ。一心不乱に野菜をみじん切りにしたり、鍋のなかで煮えたぎる具材を眺めたり、焦げないように魚を見張るだけでいい。その間、心には一切の無駄がなくなる。つまり、余計なことを考えない。この心の真空状態をつくりだすことが大切なのだ。
人はいつも何かしらを考え、言語に脳を支配されているものだが、果たしてそれは人間本来の健康的な状態といえるだろうか? 筋肉痛になったら少し体を休ませるように、脳も空っぽの状態にすると、ふっと思いもよらぬアイデアが降りてくることがある。
果物の外皮の深い色味に目を留めたり、野菜についた土の香りから遥か遠くの景色を想像したり、生の肉や魚の鱗に触れ、手を通じ触覚を刺激することも、感覚や感性への大きな刺激になると思う。
3. 窓や壁を自分の美術館にする
在宅で仕事をするうえでメンタル面はとても重要だ。いつも同じ空間にとどまり、代わり映えのしない平坦な白い壁を眺めていると、心も知らず知らずのうちに凝り固まってしまうし、より良き未来への想像といったものも、いつしか色褪せていってしまう。
意識して1日1回はベランダや庭に出ては、高き空をたゆたう雲や、遠く沈みゆく夕日を眺めてみよう。その光景は、1日として同じものはなく、常に何かしらの変化があるものだ。
また、室内では照明に気を配り、例えば生活スペースは電球色、仕事スペースは昼白色など変化を加えてもよいと思う。そうすれば、部屋を移動するだけでも気分も変わる。
海外の家に見られるように、部屋ごとに壁紙を変えるのはなかなか難しいかもしれないけども、壁に好きなものを飾ることはできる。まずは手近にあるポストカードなどを壁に飾ってみてはいかがだろう。自分だけの美術館をつくってみよう。
私は、年初に、好きな作家である柚木沙弥郎氏のリトグラフを思い切って購入し、寝室に架けてみた。たった1枚の絵を壁に架けただけでも、部屋の雰囲気がガラリと変化して驚いた。