自宅は素晴らしい「ラボ」になり得る 家で仕事をしながら豊かな時間を楽しむ方法

画=長井究衡

今回の新型コロナウイルスは、未知であるがゆえに、とても厄介な存在のようで、いつまでこの見えない脅威との攻防が続くのか、現時点では見通しは立っていない。外出の自粛が続くなか、業種によってはリモートワークがかなり進んでいるという。

本来、家は休息をとり、くつろぐべき場所であると考えて、自宅で仕事を始めることに違和感を抱く人も多いかもしれない。しかし、インターネットの発達とともに世の中の状況も変化しており、多様な働き方や生き方も広がりつつある。

私は、12年ほど前に、自宅を事務所兼用として、フリーランスの装幀家として出発した。以降。幾度かの引っ越しや、猫を含む家族構成の変化は経たものの、家で仕事をして生活をする、という基本スタイルは変わっていない。

その私の経験から言えば、いま重要なのは、たとえ不本意であっても、家で過ごすことを「いかに楽しめるか」、そして「あくまでも自分のペースを崩さないか」ということに尽きると思う。それこそが、現時点で新型コロナウイルスと共存していく方法であり、最善の対抗策ではないかと思う。

少し環境を整え、意識を変えれば、家は豊かで便利な、オールインワンの素晴らしいラボともなりうる。自分とじっくり向き合う環境に身を置くことで、本当に大切なものとは何か、どんな仕事や暮らしを望むのかも自ずと見えてくるはずだ。

今回は、家で仕事をしながら、豊かな時間を楽しむ方法を紹介したい。

1. 花を飾り、日々の経過を目の当たりにする


これは私が自宅で仕事をするようになって始めた習慣の1つだが、家のなかに生花を飾るようになった。それは単純に花が美しいとか、季節を感じるというようなこともあるけれど、もっと大切なことを花は教えてくれる。それは、花は日々生きていて、そして枯れていくということだ。

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しばらく家にこもっていると、月日の流れや時間の経過がわからなくなることがある。しかし、そんな惚けた人間の感覚にお構いなく、瓶に活けられた花は確実に日々変化していく。大げさに言うと、私たちは、命を費やして、咲いては枯れていく花の姿を見届けることになる。そして、これは人間である自分も同じだと気付く。意識していないだけで、生物である自分自身も、日々確実に変化していることを、花が教えてくれる。

余談になるが、花に関する別の発見としては、枯れつつある花もまた魅力的だということだ。頭を垂れ、茶褐色となった花は、ときに信じられないほど美しく見えることがある(まるで大野一雄の舞踏のようだ)。何も鮮やかなだけが花ではない。果たして、人間はどうなのだろうかと、自分にも跳ね返ってくる。
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文・画=長井究衡

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