新型コロナのパンデミックが引き起こす「リプライシング」

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新型コロナウイルスは、経済や市場、社会にどのような長期的な後遺症を残すことになるだろうか。その兆候はもうすでに、あちこちで垣間見られるようになっている。世界は今後、これまでとは大きく異なった場所になりそうだ。

私の知人でローゼンバーグ・リサーチ(Rosenberg Research)のチーフエコノミスト兼ストラテジストのデイヴィッド・ローゼンバーグ(David Rosenberg)は、クライアントに宛てた最近の書簡で次のように述べている。

「社会的距離戦略(ソーシャル・ディスタンシング)は今後も長く継続され、われわれは個人としても商業生活においても、規制を強いられていくだろう。貯蓄や節約が優先され、個人レベルでは十分な生活必需品を、企業レベルでは在庫資本/運転資本を確保することに、重きが置かれるようになる。巨大な財政赤字を抱えてまでも政府が放出した資金は、民間セクターが予防措置として貯蓄を増やすことで帳消しになるだろう」

景気の変化は、個人の行動変化から始まる。人々は新たな誘因に反応し、それがやがて積み重なっていくのだ。

筆者は2019年7月、「倹約のパラドックス(Paradox of Thrift)」という記事で、「個人」が貯蓄することは好ましいが、「すべての人」がお金を貯め込めば国内総生産(GDP)は減少すると述べた。現在の危機や不景気が過ぎ去ったあと、米国では貯蓄傾向がかなり強まると私は考えている。お金を使いたくなる誘因は、これまでとは違ったものになるだろう。

では、お金を使いたくなる新たな誘因とは何なのか。そしてその誘因は、私たちをどのように変えるのだろうか。

何よりも顕著なのは、「個人の安全」とは、確保するのが容易でもなければ、保証されているわけでもないことを私たちが理解したことだ。安全運転を心がけたり、ビタミン剤を飲んだり、治安の悪い地域に行かないようにしたりするだけでは、もはや個人の安全は確保できない。

新型コロナウイルスの脅威は目に見えないし、誰がウイルスを持っているかはわからない。たとえ自分の愛する人であっても、感染している可能性がある。こうした状況が、人間関係や消費傾向に、深く長期的な影響を及ぼすことになる。

さらに、これまで慣れ親しんできた既知の物事の価値について、考えを大きく変えることになる。現在、大勢が集まるコンサートやスポーツイベントは単純に禁止されている。近いうちに解禁されたとしても、以前とは様変わりするかもしれない。

マスクの着用や、他人と1.8mの間隔を開けることなどが義務づけられる可能性がある。大勢のファンたちと肩と肩が触れ合う近さで音楽やスポーツを楽しむことは、体験の「一部」だったのだが、そうしたイベントは、以前とは違ったものになるだろう。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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