ビジネス

2020.06.21

カフェオーナーが愛車ポルシェと引き換えに手にした「3つの競争優位性」

.


曽根:ZEBRAのビジネスモデルをVRIO分析、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)で、捉えるとどうですか?

嶋田:そうですね。まず「経済価値」でいうと、コーヒーはマイクロサービスです。一杯一杯、豆挽いて、一杯ずつ淹れています。作り置きはしません。そしてフランス産の小麦粉を使ったクロワッサン、そして、場の提供でしょうか。

曽根:希少性・模倣困難性はどうですか?

嶋田:わかりやすいところだと、うちにはクロワッサン生地を伸ばす巨大な機械があります。そして、クロワッサン生地を毎日深夜から仕込んでいます。効率化のために冷凍生地も検討したことはあるのですが、どうしても味に違いが出てしまうので、がんばって、仕込んでいます(こだわりのクロワッサン作り動画)。

アメリカ、ポートランドの有名ホテル「Ace Hotel」や、大きな資本を入れずにウエーブコーヒーを生み出した「Stumptown」から勉強しています。そこには、手作りが存在し、スタッフ・オーナーの「手垢」とでもいうべきものが残っているんです。そして、関係者は店舗、デザイン、施工、食材選び、豆選び、焙煎全てを説明できる。

世界中のクリエイター達がなぜわざわざポートランドに行って数百ドルの宿泊費を払うのか、それは、スタッフ・オーナーが作った残り香・余韻があるからなんです。それに価値がある。僕たちも、それらを毀損しないようにしています。

null
横浜「MARINE & WALK YOKOHAMA」店の施工写真(2019年10月)

曽根:組織はどうでしょうか?

嶋田:客とお店、スタッフの関係がフラットであることを重視しています。たとえばファーストネームで呼び合いますが、これには組織をフラットにする役割があると思っています。ライフステージによって姓が変わる人においては、インクルージョン(包摂姓)のコンテクストもあります。他の店から来たスタッフに聞くと、ZEBRAは経験・ロイヤリティが全く違うと言ってくれます。

あたり前ですが、スタッフの能力は各々違います。でも、うちでは持ち場を分けていません。「everyone does everything」です。だいたい3カ月ぐらいで全部できるようになります。元々は持ち場を分けていたのですが、持ち場には特権や力というのがどうしてもつきまとうことに気が付きました。うちでは全員ラテアートが出来ますよ。

曽根:見方を変えると、セル生産方式(少人数のチームで全工程を完了する方式のこと。作業者1人が受け持つ範囲が広いのが特徴)導入によるCSRの追求にも見えますね。

嶋田:元々はオーナーシップを持ってもらいたいと思って「everyone does everything」を始めたのですが、あらゆる現場を理解したメンバーは相互理解が深まり、信頼関係も強まります。それは、目の前にいるお客様にもダイレクトに伝わってくるとものだと確信しています。

前編 携帯電話デザイナーから相模原のカフェオーナーへ。「KPIのコペルニクス的展開」はどう生じたか 



嶋田耕介(写真右)◎携帯電話などのデザインを手掛けるデザイン・ディレクターとして活躍ののち、ベーカリーカフェ「ZEBRA Coffee&Croissant」を開店、現在3店舗を展開する。また、店舗やビルのリノベーション・コンサルティングやブランディングデザイン(CI、コーポレートアイデンティティ計画)も手掛ける。株式会社EXIDEA本社オフィスビル全体のリノベーションを一手に引き受け、1階にはZEBRAのエッセンスも盛り込んだ社員専用のカフェスペースを設けた。ほか、最近東証マザースに上場したセルソース株式会社のブランディングデザインも手がけた。 Shimada Design Solutions

曽根康司◎株式会社キャリアインデックス執行役員、社長室長。慶應義塾大学法学部政治学科卒。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程EMBAプログラム在学中。原宿と下北沢で時計店を経営したのち、インターネット業界へ。「焼肉探究集団ヤキニクエスト」メンバーでもあり、全国数百件の焼肉店を食べ歩いている。

ZEBRA Coffee & Croissant
https://www.zebra-coffee.com

文=曽根康司 写真=嶋田耕介 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事