経済・社会

2020.05.07 07:30

スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する


宮川:そうですね。さらに説明すると、スウェーデンは死亡診断書を書くとき、主な病名の順(死亡原因として寄与した順)に記入します。各病名にはコードが付いており、すべてオンラインで管理されています(日本などは手書きです)。
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新型コロナ感染者は、新型コロナ感染で死亡しなくても、感染が確認されていれば、病名として記載されます。ですから、新型コロナで死亡した数だけカウントしていたり、検査されてないが新型コロナで死亡したであろう死者数がカウントされていない他の国に比べて、何割増しかになっている可能性があります。また、パーソナルナンバーで管理されているため、死亡者のカウントの漏れもありません。

久山:なるほど。スウェーデンはかなり取りこぼしなく数字を集められているのですね。一方他国では、病院で亡くなった人しかカウントしていない国も多くあると聞きました。スウェーデンの死者数の約3分の1は高齢者施設だと発表されていますが、他国の場合それが死亡者数に含まれていない場合もあるわけですね。

宮川:このグラフは人口10万人あたりの年代別感染者数(男女別)です。これを見ていただくと、90歳以上では100人に1人以上、80歳代でも200人に1人は感染しています。死者の数でいうと、80歳以上の死亡者は全体の64%、70代以上で見ると87%。つまり、高齢者の感染リスクが高く、犠牲者のほとんどは70歳以上です。これは、公衆衛生局も認めたとおり、高齢者施設でのクラスター(集団感染)発生を防ぐことができなかったことによるものが大きいです。
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スウェーデンの年代別人口10万人あたり感染者数



青:男性 紫:女性(4月24日)。公衆衛生局のHPより

宮川:つまり、スウェーデンの死亡者数の大部分を占める高齢者、特に高齢者施設に暮らす高齢者の死亡は、施設における感染対策の失敗が直接の原因です。ロックダウンしなかったこととはあまり関係がないですね。 ちなみに、日本で同様に10万人あたりの年齢別感染者を調べてみると20代から50代が最も多く感染しており、高齢者層は低めと、スウェーデンとは逆になっています。

日本の年代別人口10万人あたり感染者


4月23日時点の日本経済新聞『チャートで見る日本の感染状況 新型コロナウイルス』より

両国とも高齢者は自己隔離をしているにも関わらず大きな差があるのは、繰り返しになりますが、スウェーデンの高齢者施設でのクラスターが原因です。

このように、各国毎に特殊な事情があり、PCR数など検査のアプローチや、統計の取り方にも差があります。感染者数の比較はもとより、死者数においても単純には比較はできないし、比較して結論を導き出すこともできません。
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文=宮川絢子・久山葉子 (編集=石井節子)

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