「清潔だから大丈夫」から一転、 外出禁止令下のトルコの生活は?

Photo by Mehmet Akif Parlak/Anadolu Agency via Getty Images

3月11日、私が居住するトルコで、初の新型コロナウイルスの陽性者確認の発表があった。感染者数は1カ月あまりの間にみるみる増え、4月27日時点で11万2261名に上った。先に事態が深刻化していた隣国のイラン、中国も抜き、現在世界7番目の感染者数の多さだ。人口8200万人の国で、日本より1桁多い。

トルコ保健省は1日あたり4万人前後に対して検査を実施しており、連日数千人規模の新規感染が明らかになっている。

2月、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での動向がトルコでもトップニュースになっていた頃は、まだ他人事に感じていたトルコ人が多かったはずだ。トルコではコロンヤと呼ばれる香りつきのアルコール(来客時やレストランでの食後、気分転換したいときなどに手に振りかける)を日常的に使う。手でとる食事も多いため、食事の前後に手を洗う習慣が根付いているし、イスラム教徒の場合は、一日5回のお祈りの前に必ず手を(足も)丁寧に洗う。「トルコ人は特別に清潔だから」と、新型コロナウイルスなど恐るるに足らないという声もあった。

それからたった2カ月で爆発的に患者数が増え、保健省から毎日発表される感染者数、死者数を呆然と眺める日々。エルドアン大統領のリーダーシップの下、突然の外出禁止令など、強硬ともとれる手段に一住民として驚くこともあった。

トルコ南東部。アーモンドの花やチューリップが咲き乱れるうららかな春の中、外出禁止令で揺れ動く市民の日常をお伝えする。

バルコニーからそろって国歌斉唱


トルコ時間4月23日、夕食後。人気のない通りを挟んで、住宅街の部屋の明かりが賑やかに点滅し合う。子どもも大人も、笑顔でバルコニーへ出てきた。この日はトルコの「国民主権と子どもの日」。

今年、トルコ大国民議会は開会100周年をむかえた。本来ならば例年以上に、大規模な祝典が各地で開かれるはずだった。代わりにトルコ全土に呼びかけられたのが、21時からのバルコニーでの独立行進曲(トルコ国歌)斉唱だ。3月からの自主隔離に続き、週末の外出禁止令を受けてひっそりとしていた街が、この時だけはにわかに活気付いた。

トルコでは週末限定で、31都市の外出禁止令が発出されている。違反すれば罰金刑をはじめ、違反の状況により法律の必要に応じて処罰がなされるという、強い措置である。

これまでに4月11、12日と18、19日の週末、23から26日が外出禁止となった。5月1日から3日の期間も決定している。最初の外出禁止令の発令は、前日夜22時ごろ。あまりにも直前に発出されたため、全国が混乱に陥り、まだ空いている商店に人々が殺到するという悲劇が起きた。その後はテレビやソーシャルメディア等を通じて、比較的早めに通告が来るようになった。エルドアン大統領によると、5月下旬までの間、毎週末同様の外出禁止令が予定されている。
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文=松本夏季

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