「GW、離れて暮らす高齢の家族のためにできること」在宅医の佐々木医師が語る

患者を往診する佐々木淳医師(左)、小田駿一撮影


在宅医療は我々だけでなく、訪問看護師やヘルパー、家族といったチームで支えています。我々だけマスクがあっても、彼らが感染したら意味がありません。

患者に関わるチーム全員がマスクを使えるように、とりあえず14000枚、約3カ月分を確保しました。さらにインドから13万枚の輸入を手配しています。これは連携する介護事業者や患者さんに使っていただく分です。我々は規模が大きいので直輸入ができますが、それもできない小規模の在宅医療クリニックはマスク不足が深刻です。

サージカルマスクはいま1枚50円、N95は1枚300-500円ぐらいで、値段が高騰しています。医師が感染すれば最低でも2週間、院内感染が起これば月単位で診療できなくなるので、リスクを考えると必要な投資だと考えていますが、取引ロットは万単位を指定されることもあり、とても高額です。感染リスクを考えて通常の患者の往診回数も減らしているので、医療機関の運営は圧迫されています。

また、悠翔会では今月から、緊急の場合は赤色灯やサイレンを使って、患者のもとになるべく早く到着できる「ホスピスカー」を導入しましたが、当面は発熱患者に特化した往診に使う予定です。発熱患者は、新型コロナウイルスに感染している可能性があり、体制が整っていない普通の病院は受け入れるのが困難です。そのため、病院探しに救急車の中で何時間もかかる、というようなことが起きています。

そこで「発熱対応ルート」を作ろうと思っています。個人防護具(PPE)を着たスタッフが患者の家に行って診察する、発熱患者を専用にみるルートです。専門にみることでスタッフも習熟して、安全性を高めることができます。自分で病院に行けない1人暮らしの高齢者や、認知症の方が発熱したとき、自宅である程度診察して、軽症なら家でみる、といったケアをお手伝いできると思います。

──読者の中には、高齢の両親や祖父母と離れて暮らす人も多いと思います。自分が病気をうつしてしまうことも心配ですが、社会的な孤立も心配です。家族のために何ができるでしょうか。

高齢になるほど重症化しやすく、重症化すると助からないことがある。このことを一人ひとりが理解しておく必要があります。

志村けんさんは70歳で「まだ若かった」ですが命を落としました。75歳、80歳と高齢になればなるほど、身体の機能も落ちて病気も増える。持病がある人、タバコを吸っている、あるいは最近まで吸っていた人、要介護で身体全体がヨタヨタしたり、老化の兆候が出ている人はハイリスクです。
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構成=成相通子、写真=小田駿一

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