VCが投資したくなる会社の特徴
ここまでじっくり読んでくれたか、軽く飛ばし読みしたかはわからないが、その仕組みがわかれば、おそらくVCが投資するスタートアップには一定の特徴があることに気づいただろう。VCが投資対象として評価するのは、おのずと「急激に大幅成長が見込める会社」になってくるということだ。
一方で、そのような急成長を期待できる会社は限られる。起業家としてVCからの投資を求める前に、そもそも彼らが求めるタイプの会社であるかどうか、そして創業者としてそれを達成する能力があるかをを自問して欲しい。
1億円は大きなお金のように感じるかもしれないが、VCにおけるリターンのロジックは変わらない。受け取る金額に限らず、スタートアップは何倍ものリターンを出すことが求められる。
今回の例では、1億を投資し、その会社に対してプラス6億の“価値”を生み出した。言い換えると、600%のROIを達成したことになる。株式市場への投資が平均10%程度のROIであることと、それ世界のトップ企業からのリターンの平均であることを理解していただきたい。
それを踏まえると、VCがスタートアップに求めるリターンの大きさが理解できると思う。トップクラスの大企業でも毎年10%の成長を達成する程度であるのに対し、スタートアップは何百倍ものリターンを求められるのだ。まさにハイリスクハイリターン。多くのスタートアップが失敗に終わるのも理解できる。同時にスタートアップを成功させる難易度の高さもわかっただろう。
VC自身も起業家である
投資を受けたスタートアップに求められるリターンの高さはハンパないが、VCが背負うプレッシャーも尋常ではない。何せ、預かったお金を使って株式投資よりも大きなリターンを生み出すことを期待されているのだから。
そのゴールを実現するために、VCの人たちはリスクの高いスタートアップ投資を通じて、最終的にポジティブなROIを生み出さなければならない。ほぼ不可能に近いぐらいの難易度である。VCの約半数は失敗し、45%はトントンのリターンで終わるのもうなずける。
自分もスタートアップを始めた頃は、VCの仕事がこれほど大変だとは全く知らなかった。てっきりVCは業界におけるロックスターであり、気に入ったスタートアップにさくっと何億も投資する。まるで、アッシャーがジャステン・ビーバーを“発掘”したように、起業家を一晩にして成功に導いてくれる存在だと思っていた。
そんな夢を見てた頃の自分は、起業家というよりも、VCの前でピッチをしまくるパフォーマーだった。彼らの投資対象になるようなビジネスモデルを理解してもらうよりも、自分のピッチスキルとプロダクトがクールであることばかりをアピールしていた。
今から考えると、VCに対してピッチのスキルを認めてもらったり、プロダクトを好きになってもらう事は、投資をしてもらう事とは全く別の軸であった。彼らは、ピッチの素晴らしさを期待しているわけではなく、自分たちの投資モデルに最も適した会社を探していたのだ。なぜなら、彼らも自分たちのプロダクトをピッチをしなければならないから。