外国人が選ぶ2010年代傑作日本アニメ10選 。『ちはやふる』も

2010年代は世界の日本アニメファンにとって、今後も古典として語り継がれる名作が数多く生み出された豊作続きの10年だった。米フォーブスではその中から「1年ごとに5作品」、合計50本の傑作を厳選する。

この50本以外にもいずれ劣らぬ珠玉がそろっており、紹介できないのが残念だ。今回は2010年と2011年のベストアニメを紹介する。

2010年


『会長はメイド様!』(J.C.STAFF)


2010年代は昔懐かしい王道ラブコメで幕を開けた。主人公の鮎沢美咲は文武両道の文句のつけようのない女子高生で、男勝りで独裁的な生徒会長だ。しかしクラスメートは美咲の秘密を知らない。校則でアルバイトが禁止されているにもかかわらず、放課後にはメイド喫茶でフリフリエプロン姿で働き、苦しい家計を助けているのだ。ところがその秘密を学校一のイケメンに知られてしまって、さあ大変! きびきびとした展開の気の利いたこのラブコメの魅力は、10年たっても色あせていない。

『デュラララ!!』(ブレインズ・ベース)


生き生きとして華のあるキャラクターひとりひとりのエピソードがアンサンブルを奏でる都会のファンタジー。池袋の喧騒を舞台に、首のない女性の妖精や首なしライダーといったアイルランド神話の幽霊たちと人間臭い人々が交錯する。登場人物は闇医者からロシア系寿司屋の職人までさまざまで、彼らの関係が絡み合い、ギャングの抗争や呪いの妖刀といったバラエティーに富んだストーリーが同時進行する。これまで観たなかで一番登場人物が多い、誰もが楽しめるワイルドなアニメだ。

『海月姫』(ブレインズ・ベース)


原作は東村アキコの同名漫画。幼い頃に先立たれた母親に「女の子は誰だってお姫様になれる」と言われて育ってきたのに、なぜか引きこもりのクラゲオタクになってしまった月海(つきみ)は、自分が理想とする母親像にぴったり合った美しい女性に出会う。しかしその人が男性であったと知り、月海は混乱する。この甘いロマンティックコメディは成長物語でもあり、新人デザイナーを発掘するリアリティ番組『プロジェクト・ランウェイ』的な要素もあり、鋭い観察眼とフレッシュな着眼点でジェンダー・アイデンティティ(性同一性)とは何かを問いかける作品でもある。

『四畳半神話大系』(マッドハウス)


原作は森見登美彦の同名小説。ひねくれた性格の無名の主人公である「私」は、華やかなキャンパスライフを夢見ながら、地味で恨みがましい暮らしを送っている。この並行宇宙的な物語が持つまばゆい質感は、湯浅政明監督十八番の演出スタイルだ。

妙に意味ありげな言葉のやり取りや人間のありようについての深い洞察が散りばめられ、荒唐無稽一歩手前の登場人物たちが夢想と現実とのあいだを行きつ戻りつする。とはいえ、舞台は現代の京都を離れることはない。そのせいか、おとぎ話チックであるのに、私たちの人生にもぴったり当てはまるビルドゥングスロマン(教養小説)としても観られる。

『神のみぞ知るセカイ』(マングローブ)


恋愛シミュレーションゲーム、いわゆる「ギャルゲー」の神として崇められる桂木桂馬に、地獄の世界が助けを求めてくる。エルシィという悪魔が、その凄腕テクを使って美少女たちの心に棲む悪しき魂を捕まえるよう頼んできたのだ。こうした「異世界もの」のなかで本作が際立っているのは、桂馬のキャラクターだ。彼は見る側の分身ではなく、長所もあれば短所もある面白い人物として描かれる。画風はシャープで、キャラデザインが独創的な秀作だ。

(今回は選ばれなかったが、2010年ではこの作品にも注目だ。『黒執事』(A-1 Pictures)『のだめカンタービレ』(J.C.STAFF)『侵略!イカ娘』(ディオメディア)『WORKING!!』(A-1 Pictures))
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黒木章人/S.K.Y.パブリッシング

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