ビジネス

2020.04.28

「家に居ろ」が通用しない。新型コロナに悩む歌舞伎町の現実

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歌舞伎町は悩んでいる。「また昔に戻るだけじゃん。地下に潜ればいいよ」なんて諦めの声も聞こえる。

僕は1997年からホストとして歌舞伎町の人間になった。ホストクラブのキャストから経営側にまわり、「Smappa! Group」の会長として歌舞伎町でホストクラブ、バー、美容室など16店舗を経営している。

新型コロナの感染拡大に注目が集まってきた3月から社内で教育してきたのは「0か100かじゃない」ということだ。

「どんな状況でもお店を営業したい」、「営業なんてするのは絶対におかしい」。どちらの極端にも付かず、その考えに至る「過程」について、しっかり考えることを大事にするという方針をとった。

そして、約2カ月近く経って、その方針でやってきたことの大変さが身に染みている。しかし、最初からその難しさは覚悟していたし、それが私の仕事だと思っている。

この文章では、コロナに関連して私が経営する店舗で取ってきた対策とその結果、そしてそれを受けて4月末現在で採用しようとしている方針転換について説明したい。なぜなら、私が店舗の経営で直面しているのは紛れもない社会の「現実」のひとつであり、ちまたで言われていることの多くはこの「現実」に目を向けていないと思うからだ。

対話を繰り返したが、頭ではなく感情で動く従業員たち


新型コロナウィルスの脅威が現実味を帯びてきた3月中旬から、すぐに従業員向けの動画を作成した。

コロナとはどういうものなのか?

何故自粛なのか?

そして具体的に従業員自身のからだの具合が少しでも悪くなった時の対応はどうするのか?

4月は報酬を通常月と変わらず100%保証し、コロナに関する動画を観るなどを仕事として課題を課した。

公的機関の発表にしっかり耳を傾け、氾濫するメディアの情報を鵜呑みにせず、とことん情報を調べ、紋切り型の言葉尻で捉えるのではなく、公的発表の真意を汲んで丁寧に従業員に説明し、各人に考えさせた。

うちの会社は今年で17年目になる。社会性を身に付けさせることや、社内教育に関しては、同業他社に絶対に負けないような取り組みをしてきた。しかし……

クラスで一番聞き分けが悪かった子を思い出して欲しい。歌舞伎町で、ホストクラブで働く人間の多くは、街で一番聞き分けの悪かった子どもがそのまま大人になったような連中だ。

そんな彼らが簡単に言うことを聞くわけがなかった。平常時ならば、もっと耳を傾けてくれたかもしれない。しかし目に見えない不安というものが大きく邪魔した。

グループ全体への動画とメールの一斉配信。更に管理職は全従業員と個別で話をし続けた。

しかし、期待する結果は得られなかった。
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文=手塚マキ

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