パンク・ロックの力で人種差別に対抗。40年前、若者が巻き起こした「白い暴動」

1970年代後半、不況にあえぐイギリスでは排外主義が台頭した。ドキュメンタリー映画「白い暴動」 から。

1970年代後半、不況にあえぐイギリスでは排外主義が台頭した。ドキュメンタリー映画「白い暴動」 から。

上の写真は、1970年代、イギリスで撮影された人種差別に反対するデモの写真だ。

抗議の声をあげた人たちは、排外主義者に暴力を振るわれただけでなく、警察官によっても不当に拘束され、死傷者も出た。ちなみに、イギリスで警察が暴徒を鎮圧するために盾を使ったのは「第二次世界大戦以来」だったという。

その第二次世界大戦でヨーロッパでも多くの命が失われ、戦後、安価な労働力として、カリブ海やアジアからの移民が歓迎された。しかし、不況に陥ったイギリスでは、増大した移民たちに仕事を奪われてしまうかもしれないといった不安から、1960年代から70年代にかけて排外主義や人種差別の意識が高まっていた。

同時に、ナチス・ドイツを彷彿とさせる極右政党NF(British National Front=イギリス国民戦線)も台頭し始める。そんな暗雲が立ち込めていたロンドンで、1人の男が立ち上がった。彼は全国の若者に呼びかけ、ロックなど音楽の力であらゆる人種差別に対抗するRAR(ロック・アゲインスト・レイシズム)というムーブメントを巻き起こしていく。

そのRARの人種差別主義との闘いを描いたイギリス発のドキュメンタリー映画が『白い暴動(WHITE RIOT)』だ。4月から日本でも公開されたが、新型コロナ禍で、自宅でも楽しめるように期限配信もされている。(詳細は文末を参照)

#分断に思う

『白い暴動』の監督は、BBC放送などでドキュメンタリーを手掛けてきたルビカ・シャー。イギリス生まれだが、イランとパキスタンにルーツを持つ。2015年にはデヴィッド・ボウイの短編ドキュメンタリー『Let’s Dance: Bowie Down Under』がベルリン国際映画祭でプレミア上映されるなど、注目の若手女性監督だ。

ロックやパンクなど、当時、人種差別をする勢力と闘ううえで推進力となった音楽に合わせて、作品はテンポよく進んでいく。ドキュメンタリーでありながらポップな感覚にも溢れ、退屈することは一切ない。

シャー監督はどんな思いで、40年前の「分断」を修復する、力強いメッセージを盛り込んだ作品を描いたのだろうか。

ルビカ・シャー監督
ルビカ・シャー監督
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文=督あかり

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