ソフトバンク支援の「清掃ロボット企業」が狙うコロナ後の需要

Photo by Tomohiro Ohsumi / Getty Images


モスクワ育ちの52歳


現在52歳のイジケヴィッチはモスクワ育ちで、1980年代後半のペレストロイカで混乱に陥ったソビエト連邦を離れ、米国に移民した。その後、ミシガン州立大学の数学科でPh.D.を取得した彼は、計算論的神経科学者として複数の著書を発行するなどの実績をあげたが、学問の世界を飛び出したくなった。

2009年にイジケヴィッチは、テック系の連続起業家であるAllen Gruberと共にブレインを設立した。創業当初のブレインは、クアルコムやアメリカ国防総省が管轄する高等研究計画局「DARPA」のR&Dプロジェクトに関わった。そして2014年、ブレインはマシンラーニングや、自律走行型ロボットのコンピュータビジョンの開発を開始し、初期のプロダクトを2年後に立ち上げた。

ロボットデリバリー分野は競争が激化しているが、ブレインの製品の強みは、狭いスペースの中でも小回りが利き、人を載せて走行可能な点であるとイジケヴィッチは考えている。

ブレインは2017年夏のソフトバンク主導のシリーズCラウンドで、1億1400万ドルを調達して以降、開発を加速させてきた。「当時、マサ(孫正義)と出会って、同じビジョンを共有できた。あらゆる場所にロボットを導入していきたいという目標をシェアできた」とイジケヴィッチは話す。

ウィーワークへの投資に失敗したソフトバンクは財政的に厳しい状況にあるが、ブレインに新たな出資を申し出ただけでなく、新たな投資家を呼び込んでくれたという。「我々はウィーワークとは真逆のポジションに居る企業だ」と、イジケヴィッチは述べた。ソフトバンクのコメントは得られていない。

今回の出資に参加したClearBridgeは、ブレインのOSを搭載した清掃ロボットの製造元であるTennantにも出資している。「自律走行型の清掃ロボットの需要は、パンデミックを受けてさらに高まった」と、ClearBridgeのマネージングディレクターのAram Greenは述べた。

イジケヴィッチは現在のブレインの評価額を明かしていないが、「前回のラウンドの際の評価額の数倍に達している」と話した。PitchBookのデータによると、ブレインの評価額は2017年の資金調達以降に、2億4000万ドルに達していた。

編集=上田裕資

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