「榮太樓總本鋪」の後継者はいかにして経営者の表現と感性を磨くのか #新しい師弟関係

自信作の書を手にする榮太樓總本鋪副社長の細田将己(右)と、日本雅藝倶楽部を主宰する川邊りえこ


細田:この春に日本橋三越本店で開催された「全国銘菓展」に榮太樓總本鋪が出展した際は、商品名の「慶びもち」という字を僕が書き、それをポップとして店頭に出させていただいたんです。それを見たお客様が「これは誰が書いたのか?」と。「とても素敵な文字だよ」とおっしゃっていたということを後から聞いて、とても嬉しくなりました。
 
川邊:ここでは流儀を学ぶのではありません。その方らしい表現を目指し、感性のアンテナを高くしていただく。日本文化は一方通行では成立しない独特の文化。受け手の感性を磨かないと成り立ちません。ですので、「総体の美」を掲げ、それを「雅藝(みやびごと)」という造語にして、日本文化の受け手の感性を磨くお手伝いをさせていただいています。
 
細田:日本の経営者が昔の数寄者のように文化のことも日本のことも発信できるように、と始められたのですよね。
 
川邊:料亭「吉兆」創業者の湯木貞一さんに師事した京都嵐山吉兆会長の徳岡孝二氏は、こうおっしゃっていました。床の間は舞台、必ず意図がある。だから昔の財界人は和室に通されたらまず、床の間を見る。今の人たちは目にも止めない、と。「床の間拝見」は、作法という決まりごと以前に、心なのです。今日のメッセージは?と気にかける。まさに日本文化のキャッチボールなのです。

西洋の現代美術の個の表現や、同じ絵画が常に装飾されていることとは明らかに違う美意識が日本にはある。この日本的感性を、私は経営者の皆様にお伝えしたいのです。(続きはフォーブス ジャパン 2020年6月号でお読みいただけます)
 
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川邊りえこ◎美術家、書道家。経営者を数寄者にとの思いを元に1995年に会員制倶楽部「日本雅藝倶楽部」を設立。神職としての精神を基に「KOTOTAMA」「八百万神様魂振巡礼」「総体の美、空間作品」を展開。
 
細田将己◎1973年生まれ。榮太樓總本鋪 取締役副社長。三井物産勤務を経て、2007年株式会社榮太樓總本鋪入社。企画担当役員・副社長歴任の後、19年「榮太樓總本鋪」の持株会社、細田協佑社社長就任。

文=谷本有香、写真=平岩享

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