問題は、この失業者の圧倒的なボリュームだ。罹患者の急増で医療崩壊の危機が報じられる一方、失業保険の支給もすでに行政崩壊を起こし、給付は遅延に遅延を重ねている。
2020年に入ってからのたった4カ月で、ネバダ州全体ではすでに27万件もの新規失業保険請求が申し込まれている。これは、2018年と2019年の総合申込数を足したもの(つまり24カ月分)よりも多く、州全体の労働者数が140万人であることを考えると、すでに20%の失業率となっている。これに、コロナショック以前にあった失業者数を加味すると、いまやネバダ州は4人に1人が失業してしまったことになる。
筆者の家にも、つい昨日、「あなたの家の前を通ったのだが、現金で買いたいからぜひこの番号に電話してくれ」という電話がかかってきた。これもあきらかに詐欺といっていい。
アメリカでブッシュ(息子)大統領政権時代に勧誘電話を一切希望しない家庭のために、The National Do Not Call Registry(勧誘停止登録)という制度をつくり、業者は、その登録電話に勧誘の電話をかけてはいけないという法律になっている。これで一挙に、世の中から望まない勧誘電話が減ったのだが、いまはロボットによる勧誘電話が行われるようになり、もはやトレースもできないので、この手の電話を技術的に止めることはできない。
外出禁止が招くトラブル
ちなみに、いよいよ、トランプ大統領が宣言した全国民現金支援給付が始まり、確定申告で還付金振り込み用に指定した預金口座に一斉に現金が入金されている。しかし、預金口座を税務署に登録してない人や、確定申告をしたことのない人、引っ越しをした人などは、新たに手続きを踏まねばならず、ここにも前述したものと同様の詐欺が横行している。
失業した家庭では、家賃が払えなくなり、親元に家族ごと逃げ込むという状況がよく聞かれるようになった。シニア世帯しか住んでなかったコミュニティに、いきなり中年、青少年、幼児などが親を頼って引っ越してきて、道路には長期駐車するクルマがあふれ、騒々しくなったというクレームも出てきた。
昼間は職場にいたはずの配偶者が家にいることによって、夫婦関係が悪くなったり、そこに義理の両親との関係も加わったり、また学校に行けなくなった子供が家で勉強しようにも、家の中で居場所がなく、出てはいけない外に出て遊んで、トラブルを生んでいる。
外出禁止令が出てからまだ1カ月余りを過ぎたところなので、人々はそれぞれ我慢しているが、確実にストレスのレベルは上がってきている。わが家の犬も、見知らぬ犬と、見知らぬ散歩者に吠えまくっている。
人々は、そろそろ外出禁止令に疲れを見せ始め、変化を見せているコミュニティにおける付き合い方に戸惑っている。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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