アメリカのほとんどの州が外出禁止令を出し、たくさんの仕事が失われ、失業者が出たため、失業保険を得て家計を支える家庭がうなぎ上りに増えている。そこを詐欺集団が狙っている。
リーマンショックのときは、夫が失職しても妻が仕事を持っているというケースが多かったので、家計がゼロになるということはあまりなかった。しかし、今回は夫婦ともに職を失っているケースが多く、失業保険をもらわないと、日々の生活もままならない状況だ。
アメリカ版の振り込め詐欺
そんななか、その失業保険を狙う電話詐欺が増えている。まず、見知らぬ人間から電話がかかってきて、失業保険の事務所を騙り、手続きに不備があるなどとして、ソーシャルセキュリティーナンバー(日本でいうマイナンバー)を訊いてくる。そして、その情報を利用して、本人になりすまし失業保険を得てしまう。アメリカ版の振り込め詐欺と言って差支えがない。
一方、完全に振り込め詐欺という手口もある。電話で「手続きに長くかかっているが、いますぐ手数料を振り込んでくれたら、すぐに失業保険を払える」などと嘘を言ってカネを騙し取るのだ。
なぜこんな簡単な手口の詐欺に引っかかるのだろうと思う人もいるだろうが、振り込め詐欺とは本来そういう弱者の心理につけ込むものだから、失業して困っている世帯にとってみれば、普段は相手にもしないそんな電話にもつい引っかかってしまうのだ。
また、少し手の込んだ詐欺としては、電話で聞き出した個人情報でクレジットカードを、自分の住所で新規発行し、このカードで大量の買い物をするという詐欺もある。このような場合は、法的には、被害者にそのカードでの買い物に対して支払い義務はない。
しかし、金融機関の個人信用データベースが詐欺集団にすっかり荒らされてしまっているので、修復にかかる数カ月間、生活に困窮する人たちが新たにローンを利用することができなくなって、コロナショックを乗り切るということができなくなるという実害が発生している。
ラスベガスのリビュー・ジャーナル紙の調べによれば、この3カ月ですでに3000件を超える失業保険詐欺の申し立てが、ラスベガス市当局に寄せられているという。
ネバダ州の労働局のスポークスウーマン、ローザ・メンデス氏によれば、政府は複数の本人確認方法をもって職を失った人たちに失業保険を支給しているが、振り込め詐欺の集団は、すでにそれを上回る個人データを持っている場合があり、なりすまし受給は技術的に可能なので気をつけて欲しいと注意喚起している。