中山亮太郎が社長を務めるマクアケは、日本最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」を運営。大手企業も新規事業のプレマーケティングとして活用するなど注目を集め、高成長を続けている。一方、塩田元規率いるゲーム会社アカツキは、創立6年でマザーズに上場し、20年版「日本における働きがいのある会社」ランキング(従業員100人〜999人部門)に7年連続でベストカンパニーに選出された。両社の経営者をときに救い、影響を与えているのは、大企業のベンチャーキャピタル部門をリストラされた経験をもつ「LOVEメンター」こと勝屋久と、パートナーの勝屋祐子だ。
中山:「面白いことを考えている人たちの甲子園をやったらどう?」。マクアケの会社登記の準備をしていたとき、勝屋久さんに言われました。あまりに突飛な意見でした。でも、勝屋さんはオフラインで想いのある人たちをつなげてきた人。「甲子園=アイデアや想いを集めてつなげる」。僕たちがやりたいのは勝屋さんのオンライン化じゃないか。ここからマクアケのプラットフォームは構築されました。
勝屋:世の中にいいものが出てくる仕組みが作れそう。それがクラウドファンディングよりも印象的でした。
中山:勝屋さんは「みんなの魂を開放してあげたほうがいいよ」とも言いました。事業を伸ばさなければと固くなっていたときだったのでハッとした。会社のビジョンを言語化しようと思い立ち、「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」というマクアケのビジョンが誕生しました。
塩田:アカツキ創業時、僕は完璧な自分を目指しすぎ、死にかけながら走っていました。不思議だけど空気の読めない勝屋さんが社内講演で話すと、組織から「構え」が取れる。それは勝屋さんが自分のダメなところを見せるからです。完璧な人間なんていない。頑張って自分を大きく見せなくてもいいんだ。強い組織には無理がない。それに気づき、会社も自分もアップデートすることができました。
祐子:勝屋はいい意味で空気が読めなかったり、ときには質問にも答えてなかったりします(笑)。でもとてもピュアなので笑いが起き、温かい「場」が創れる。一つの才能です。
塩田:僕もそうだけど社員も悩みは祐子さんに相談しています(笑)。
祐子:誰しも一生懸命悩み、考えます。でも一人で悩むと方向性を間違うことも多い。そこに気がつくとそれまでの「鎧」がとれて心がラクになり、違う視点に立てるんです。
中山:仕事の際に自分の精神状態が「中庸」、つまりバランスを取れる状態にあることが大事だと気づきました。中庸でいないと自己顕示欲、妬み・嫉みが出てくる。僕は仕事のモヤモヤというか、「魂の垢」を勝屋さんに吐き出して、心のバランスを取っていた。そのフラットな状態で湧き出た発想を自分は大事にしています。
勝屋:フラットな状態で発想したのが「応援購入」だったね。支援は上から目線だけど応援はフラットでいい。
中山:創業時、クラウドファンディングというと「資金集め」という印象でトレンドワードでした。でも、勝屋さんは「違うんじゃない?」と。その言葉を自分の心に壁打ちすると違和感に気づけた。事業概念に縛られなくてもいい。クラウドファンディングという言葉にこだわらず、マクアケならではの価値を意識し始めました。
勝屋:経営者は当然会社のことに詳しい。事業を他人からコントロールされるのは嫌なんです。自分は他人をコントロールするのはやめよう。仲間であろう、LOVEな世界を作ろう、というスタンスでいます。みんなもっと素直になっていい。喜怒哀楽むき出しにしていいんですよ。(続きはフォーブス ジャパン 2020年6月号でお読みいただけます。)
「LOVE」なメンターに出会って起きた、マクアケ・アカツキ両経営者の変化とは? そのほか、マネーフォワードCEO辻庸介、作家の辻仁成から政治家野田聖子まで、全55組の師弟関係を一挙公開。フォーブス ジャパン2020年6月号は現在、好評発売中! ご購入はこちらから。
中山亮太郎◎マクアケ 代表取締役社長。1982年生まれ。2006年サイバーエージェント入社。13年サイバーエージェント・クラウドファンディング(現マクアケ)設立、社長就任。19年東京証券取引所マザーズ市場に上場。
塩田元規◎アカツキ 代表取締役CEO。1983年生まれ。新卒でディー・エヌ・エーに入社。退職後、2010年アカツキを創業。16年東京証券取引所マザーズ市場に上場。17年に東証一部に市場変更。
勝屋 久・祐子夫妻◎久/マクアケ社外取締役。アカツキ社外取締役。日本IBMに25年間勤務したのち退職、祐子夫人と勝屋久事務所設立。祐子/秘書業を経て、夫とともに経営者や企業のコンサルを行う。