福利厚生の財源に いま「団体医療保険」が注目される理由

krisanapong detraphiphat/Getty Images

日々の暮らしのなかで、たびたび耳にする「福利厚生」という言葉。その意味するところや制度について、すらすらと説明できる人は意外と少ないのではないだろうか。

就職活動をする大学生に聞いたところでは、福利厚生の整っていない企業は、「会社が従業員を大切に思っていない会社」という印象があり、いまや「ブラック企業」かどうかを見分ける際の指標のひとつにもなっているという。

福利厚生は企業の人気ランキングにも影響


「福利厚生」という言葉は、「福利」が幸福と利益、「厚生」が生活や身体を豊かにすることで、これを合わせたもの。一般的には、企業が従業員に対して通常の賃金や給与にプラスして支給する非金銭報酬と定義されている。つまり、従業員や役員の心身ともに健康な環境を維持するために、企業が給与のほかに提供する制度やサービスなどを総称する言葉という理解でよさそうだ。

この福利厚生の充実度は、就職活動中の学生による企業の人気ランキングにも少なからず影響を与えている。人材広告業の大手であるマイナビの調査によれば、「企業選びで最も注目するポイント」として「福利厚生が充実している」を挙げる割合が年々上昇しており、2020年卒の就活生ではついに首位(38.4%)となっている。

null
【出典】マイナビ「2020年卒マイナビ学生就職モニター調査7月の活動状況」

グラフは、企業選びにおいて注目するポイントを3つ選択する形の調査で、2016年卒から2020年卒までの就活生を対象にした調査結果をもとに、特に割合が高い上位10項目の推移を抜粋したものだ。

「企業経営が安定している」や「企業の成長性が見込める」などの企業評価に関する項目の割合が、2018年卒から2019年卒にかけて大きく下がっていることがわかる。一方で、「福利厚生が充実している」「給与や賞与が高い」「自分が成長できる環境がある」といった働く環境に関する項目の割合は上昇のトレンドにある。

つまり、企業自体のスペックよりも、企業が自分に対して何をしてくれるのかという働く環境の充実具合に着目する学生が増加傾向にあるということだ。終身雇用制度が崩壊するなか、会社におもねらない若者が増えている印象を受ける。

高まる医療保障へのニーズ


福利厚生は、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」に大別される。「法定福利」は、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、介護保険といった法律で実施を定められたもののこと。そして、「法定外福利」とは、法律に規定されない制度やサービスで、従業員とその家族の生活を向上させるために企業側が任意で設定するものとなる。

たとえば、通勤手当や住宅手当、社宅や独身寮の用意、健康診断の費用負担、慶弔見舞金、財形貯蓄制度、弔慰金、慶弔見舞金、死亡退職金制度、資格取得などの自己啓発支援、社員食堂の設置、リフレッシュ休暇などが、法定外福利に当たる。

労働政策研究・研修機構が2018年にまとめた「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によると、福利厚生制度・施策(サービス)48項目について、企業が実施している施策ベスト5は、慶弔休暇制度(90.7%)、慶弔見舞金制度(86.5%)、病気休職制度(62.1%)、永年勤続表彰(49.5%)、人間ドック受診の補助(44.6%)となっている。

一方、従業員調査で「特に必要性が高いと思う制度・施策」を尋ねた結果のうち、10%以上の回答があった項目はグラフの通りだ。

null
【出典】労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」

休暇関連のほかは、全体的に健康や病気、治療に関する項目が、ことのほか多い印象を受ける。そのため、最近では、これまでの慶弔事にお金を出すという見舞金規程を変更・追加する形で、従業員が病気やケガで入院したり、手術を受けたりした際にお金を受け取れる制度を導入する企業がじわりじわり増えてきている。
次ページ > 財源に団体保険を活用

文・図=竹下さくら

ForbesBrandVoice

人気記事