世界経済が過去の市場の崩壊後と同じパターンの急回復を遂げることは期待できないと、いくつもの危機を乗り越えてきた84歳の大物投資家は4月24日のブルームバーグのインタビューで述べた。
彼は当座のところ株式の購入を控え、現金を確保している。なぜなら、現在の株価が過大評価されているからだという。「短期的に大規模な下降気流に飲み込まれる可能性がある」とし、「投資家は極めて慎重になるべきだ」と話している。
ただし、市場の急落の中においても「良い機会」はあるという。彼は今、商業用不動産をショート(売り建て)にし、さらなる打撃に備えている。アイカーンは3月13日のCNBCのインタビューで、2008年の金融危機と同様の不動産バブルの崩壊が起こると予測していた。
彼は米製油会社CVRエナジーや自動車部品大手のTennecoの株式を大量に保有しているが、この2銘柄の株価はパンデミックにより大きく落ち込んだ。
「現在の株式市場はリスクが高すぎる」と話すアイカーンは、新型コロナウイルスの影響が経済に巨大なリスクを投げかける中で、S&P500種株価指数が2021年利益予想の17倍で推移する状況は、「全く正当化できるものではない」という。
2019年の中盤から、彼は投資家が商業住宅ローン市場の信用状態を取引できるようにする投資信用デフォルトスワップ(CDS)のCMBX 6のショートに膨大な資金を注入してきた。商業住宅ローン市場の大部分は、ショッピングモールと紐付いており、アイカーンの動きは「モールショート」と呼ばれている。
この賭けは、パンデミック以降の小売店の閉鎖を受けて成功を収めた。米高級百貨店のニーマン・マーカスや、JCペニーは破産の準備を進めている。3月の初旬以降に、CMBX 6を構成するいくつかのローンのインデックスは最大40%の急落となった。
4月20日には、原油先物相場が前代未聞の急落となり、1バレルがマイナス40ドルでの取引となったが、アイカーンは誰もが売りに走る中で、割安な原油を買っていた。彼の選択は正しかった。原油の先物価格はその後の3日間で50%近くもリバウンドしたのだ。
フォーブスの試算でアイカーンの保有資産は現在、139億ドル(約1.5兆円)に達している。