世界13億人の障がい者にとって「孤立感」は日常的。ポストコロナ時代を考える

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さらに、新型コロナウイルスの世界的流行は、デジタル通信がきわめて重要であることを浮き彫りにしています。パンデミック期のビジネスを滞りなく動かし、自宅に留まっている人々を友人や家族とつなげ孤立させないようにする。デジタル通信がもたらすこうした価値は、障がいのある人々にも適応されなければなりません。ウェブサイトやデジタルメディアを完全にアクセス可能なものにし、字幕や音声解説が例外なく標準となるよう推し進め、私たちが今受けている恩恵を、障がいのある人々もまったく同じように受けられるようにしなければならないのです。

アクセスがないことで企業が対象とする人々に到達する多くの機会を失っていることは、すでに周知の事実です。2016年、英国のクリックアウェイパウンドの調査によると、400万人以上の人々が何らかの障害に遭遇してネットでの購買を諦めており、その損失額が117.5億ポンドと推測されることが判明しました。この損失額は2019年には171億ポンドに達しています。これは、こうした現状を変えるべきだと企業に強く促す調査結果です。そして、これを変えるために行動すべきときは今なのです。

個別のニーズに応える「インクルージョン革命」を


私が「インクルージョン革命」と呼んでいるものは、この数年で勢いを増しています。障害のある人々を内包することによりもたらされる道徳的、社会的、経済的な恩恵にグローバル企業が着目しているからです。2019年に世界経済フォーラムにて始動した「The Valuable 500」は、障がいのある人々をビジネスのリーダーシップのアジェンダに据えることを、国内企業および多国籍企業500社に呼びかけるグローバルな運動で、開始以来、世界をリードするCEOと世界的ブランド260が参加しています。参加企業からは、世界中の障がい者がもたらす広範なビジネス、社会的、経済的価値を解放して変化を産みだすためのヒントが提示されています。

私たちは今、この問題への取り組みを加速させ、この数週間で得た学びを土台にして、障害のある人々を内包する新しいシステムを世の中に作りだす機会を迎えています。私たちは一人ひとりが持つ価値をもっと認識し、誰一人取り残すことなく、すべての人々をインクルージョンすることを、例外的なことでなく「組み込こまれたもの」にすべきなのです。

私たちは、自分たちの世界のシステムを変えられると思っていませんでしたが、実は変えられるのだということをこの危機の最中で実証しています。未来に向けて変えていく、これをやらない理由はありません。新型コロナウイルスの終息後の世界で、始めの段階から完全なインクルージョンを実現させるため、新型コロナウイルス終息後のシステムを再設計すべきタイミングは今なのです。

そして、この大流行の最中にある今、障がい者には個別のニーズがあることを忘れてはなりません。繰り返しになりますが、危機を迎えている2020年、障がい者コミュニティの個別のニーズが見過ごされているケースが多く見られることが深く憂慮されます。未来に向けたシステムを設計するときに重要なことは、過去の過ち、つまり、現在の危機を繰り返さないことです。

障がいと共に生きる人々の市場価値を認識することは企業に恩恵をもたらしますが、障がい者を排除する時代を今すぐ終わらせるべきだという、もっと大きな道徳的そして社会的な命題があるのです。多くの人々は今、集団の社会的排除がどのような感情をもたらすか身をもって経験しており、孤立がもたらす感情を知ったあとで「知らなかった」状態に戻ることはできません。私たちはすでに、排除されることの世界共通の痛みを知っているのです。未来について考える時、誰一人取り残さないことを肝に銘じなければなりません。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Caroline Casey, Founder and Director, The Valuable 500

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