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2020.04.29 09:00

NASAに「輸送サービス」を売る。宇宙産業「100兆円市場」のロマン|トップリーダー X 芥川賞作家対談 第4回(前編)


宇宙をやるにも「経営」と「資本」は不可欠


そんなアメリカでの大学院時代、非常に刺激を受けたある人の話があります。
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「民間で宇宙旅行ができる宇宙船を開発したら賞金10億円」という賞金レース、「Ansari XPRIZE」(編集部注:後に袴田自身が挑戦する「Google Lunar XPRIZE」の前身にあたる)の2004年のレースで有人ロケットを飛ばした「Virgin Galactic」(現在では宇宙旅行を提供する企業としてよく知られる)という企業があったんです。

そしてそこでエンジニア兼テストパイロットだった人が、僕が通っていた大学院に講演しに来てくれた。その講演を聞いて、「民間の事業」として宇宙旅行が立ち上がっていくんじゃないか、という実感を強烈に感じました。

袴田:しかし、逆に民間でやるには、技術だけではダメ、「経営」と「資本」が不可欠なことは当然でした。そこのところはまだ誰もやっていない、やってみようかと思いました。
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でも、自分はリーダーシップがあるタイプではない。なので、いきなり会社は作らずに、コンサルティング会社に就職して何年か経った頃に、運命的な出会いがありました。

2009年、友人の結婚式で隣に座った人が、ヨーロッパの「ホワイトレーベルスペース」というチームの関係者で、「ローバー」という月面探査車の技術開発は東北大学の吉田和哉教授にお願いしているので、その日本側の資金調達を手伝ってくれないか?という話になり、それをきっかけに月面探査の国際レース「Google Lunar XPRIZE」への挑戦を始めたんです。そんなふうに宇宙事業と関わり始めながら、アメリカを中心に民間の宇宙事業の波が来る、事業としてやっていけるのではないか、と思うようになって。

上田:なかなかいないですよね。コンサルティングができて宇宙工学の知識もある日本人って。でも、まさか自分が起業するとは思っていなかった?

袴田:ええ、どちらかというと自分は「参謀型」、やりたい人をサポートするような立場と思っていましたが、実際は初めてしまった。

上田:しかし結婚式での隣り合わせとは、まさにセレンディピティですね、偶然が偶然を呼んだ。


芥川賞作家 上田岳弘

開発するのは探査車両と着陸船、ビジネスモデルは「輸送サービス」


上田:御社は現在、「ローバー(地球外の天体の表面を移動しながら観測、探知する探査車両)」と「ランダー(着陸船)」を開発されています。具体的なビジネスモデルをお話いただけますか。

袴田:メインのビジネスモデルは「輸送サービス」で、お客さんは、まずは宇宙機関がメインです。NASAとか、ヨーロッパ、日本も含め、色んな国の宇宙機関が月の探査に関心をもっているので、ニーズはまずはそこです。

国の宇宙開発は、予算は同じでも、ひとつひとつのミッションがどんどん大きくなって予算の配分が難しくなっている。そこでNASAなどではとくに、「輸送系は民間にやらせてしまおう」という傾向が強くなっています。

上田:従来は「月まで届けば万歳」だったのが、今は、「着陸した上で、月で何かをしなければならない」とミッションが広がってきている。だから、「届けるまで」はアウトソースした方が、予算の分配がすみずみまで行きわたる。宇宙産業自体が「進化」しているということですね。
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文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋 サムネイルデザイン=高田尚弥

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