まず大切なのは「キャッシュ」 満を持しての「経営改革最終章」とは - 日本ペイントホールディングス社長 酒井健二

リーマン・ショックでどん底に落ちた会社を率いることになったのが2009年。
かねてからの計画通り、会社の体質を強化し成長企業への転換を図る改革を断行した。
その成果は市場に高く評価され、最高益の更新が続く中で迎える改革最終章―。
利益を拡大し「世界のトップ塗料メーカーと肩を並べる」体制は、ついに整った。


―日本ペイントホールディングスの株価はこの3月12日には4,825円という上
場来高値を記録し、大幅続伸を続けています。市場での高い評価の要因はどこにあるとお考えですか。

酒井健二(以下、酒井):私は2つの要因があると考えています。1つは、私たちが2009年度から取り組んできた中期経営計画「サバイバル・チャレンジ」のステージⅠとステージⅡによって、リーマン・ショックの影響で悪化していた会社の業績が競合他社並みになったことです。それまで営業利益も経常利益も純利益もずっと負けていた。業績が日本の競合他社並みになったら株価も上がるだろうと私は思っていたので、それがその通りになったというのが1つ目の要因です。

2つ目の要因は、シンガポールの合弁企業パートナー「ウットラムグループ」との協業関係の深化です。14年12月に同グループと共同で展開しているアジア合弁会社を子会社化すると同時に、ウットラムに対して6,000万株の第三者割当増資を実施しました。これに市場が反応して、第三者割当を発表した14年2月には一時1,301円まで落ちた株価が戻ってきました。
つまり、市場としてはこれらのことを好意的に捉えてくれたのだと理解しています。

―酒井社長が取り組まれたサバイバル・チャレンジが成功したことが、今の高
収益体質につながったと考えてよいのでしょうか。

酒井:サバイバル・チャレンジを掲げた理由ははっきりしています。リーマン・ショックで、収益がドーンと落ちてしまった。そこから何とかして脱出するためには、利益体質へ転換しなければならなかった。緊急対策としての人件費・経費削減を行い、抜本対策として安定的利益を創出するために、グループとしての体質強化や生産性改善などの構造改革をいたしました。要するに、当たり前の会社にするために、会社一丸となって努力しましょうというものだったのです。

おかげさまで、助走期間に当たる第1期のサバイバル・チャレンジの目標は達成し、続いてホップ・ステップ・ジャンプのホップに当たる12-14年のステージⅡでは成長企業への転換、つまり「稼げる体質」への転換を図り、それを達成しつつあります。そして15年からはステップ&ジャンプの期間として、世界のトップ塗料メーカーと肩を並べるような企業風土・体質の実現を目指します。だから、大変なのはこれからです。世界のビッグ2は年商で1兆円以上ある。現状では日本メーカーが束になっても勝てません。アジア合弁企業の子会社化もそのためです。また持株会社体制に移行し、4つの新事業会社を発足させるのも、世界に伍して戦うための体制づくりです。
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文=鈴木裕也(フォーブス ジャパン)

この記事は 「Forbes JAPAN No.10 2015年5月号(2015/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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