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2020.04.27 12:00

コロナのいま問われる、社会課題解決型スタートアップの真価とは?

パレ・フタバの福山工場でマスクを作る様子

パレ・フタバの福山工場でマスクを作る様子

新型コロナウイルスの影響で、スタートアップの資金調達環境は悪化し、経営状況が厳しくなっている。一方で、厳しい状況だからこそ、社会性と経済性の両立を目指す「社会課題型スタートアップ」として社会のために何ができるのか、模索する動きがある。

その一例が、保育施設向けにITサービスの提供などを行う「ユニファ」(東京都千代田区)と衣料品の生産プラットフォームを運営する「シタテル」(熊本県熊本市)。NPOなどと共同で、0歳から5歳までの幼児教育・保育を行う施設に対して、洗えるマスクを無償で届けるクラウドファンディング・プロジェクトを始めた。

4月下旬に、第一弾のマスクが児玉保育園(埼玉県本庄市)に到着し、保育士から「繰り返しや着脱に耐えうる丈夫なマスクは、大変ありがたい」と好評を得ている。

全国の保育施設は約48000施設。ユニファのデータによると、4月7日に緊急事態宣言が発出されたあとも、医療従事者やどうしても仕事が休めない親のために、運営を続けている施設が多いという。そのなかで大きな問題になっているのが保育士のマスク不足だ。 

保育現場は多数の子どもとの接触が不可避だが、横浜市の任意団体が3月に実施したアンケートで96%がマスク不足を訴えるなど、感染防止対策が十分にできず、保育士から不安の声があがっていた。4月10日から、希望施設の申し込み受付を始め、既に2000を超える施設から問い合わせがあった。「想像以上に応募があり、洗えるマスクのニーズが非常に高いことを実感した」とユニファ取締役CFOの星直人は話す。

「私たちの顧客の保育施設からマスク不足で困っていると聞きました。自分たちで800枚ほど確保しましたが、顧客は7000施設以上。しかも1回しか使えない使い捨てマスクでは、とても足りません。不織布を使ったマスクは、感染防止の観点で優れていると思いますが、医療従事者に優先的に供給されるべきです。そこで、保育施設向けに洗えるマスクを送れないかと考えました」(星)。

マスクは、ユニファと以前から付き合いがあった、病児保育・一時保育を運営する「認定NPO法人ノーベル」の理事、桑田良紀の紹介で、シタテルと老舗ストレッチパンツ専門メーカーの「パレ・フタバ」(広島県福山市)が開発。ストレッチパンツに使う特殊な超伸縮素材で、サイズによらずフィットし、何度洗っても毛羽立ちが少ないように作られている。衣料品の生産プラットフォームを運営する「シタテル」が、このマスクを増産できるように生産ラインを確保した。

6月末までクラウドファンディングサイトのREADYFOR(レディーフォー)で2500万円の寄付を募り、最低2000施設に20枚ずつ、合計4万個を無償で配る。問い合わせが多かったため、配布先を増やすことを検討中だ。寄付が足りなかった場合は、差額分を全額ユニファの資金負担する。
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文=Forbes JAPAN編集部

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