Jumiaは目先の収益よりも事業拡大を優先してきたが、その戦略に疑問符が灯り始めている。
同社の創業当初からの大株主だったドイツのロケットインターネットは、Jumiaの株式の11%を保有していたが、4月2日に持ち株を売却し、他の出資元にも動揺が広がった。マスターカードはIPO前のJumiaに5600万ドルを投資したが、現在の同社の持ち株の評価額は520万ドル程度にまで縮小している。
さらに、IPO直後の同社には、不正会計スキャンダルが持ち上がっていた。Citron Researchが「Jumiaが上場申請時に提出した数字に齟齬がある」とのレポートを発表し、Jumia側は「数字の誤りは不正な注文から生じたものである」と弁明していた。
収益面でもJumiaは当初の目標を達成できていない。同社は2022年までに収益化を達成するとのゴールを掲げていたが、2019年第4四半期には6600万ドルの損失を計上し、2019年通年の営業損失は2億4700万ドルに膨らんだ。投資家らが事業の先行きを懸念する中で、Jumiaの株価は85%以上もの下落となっている。
ただし、明るい材料もある。JumiaのEコマースプラットフォームは2019年時点でアフリカで8万1000社以上のマーチャントを抱え、アクティブユーザーも400万人を超えている。また、独自の決済サービスのJumiaPayをナイジェリアやエジプトに加え4つのアフリカ諸国に広げており、決済ボリュームは今年に入り、昨年の2倍に伸びているという。
Jumiaはこの決済サービスを各国に拡大したい考えだ。
しかし、アフリカのフィンテック分野でも競争は激化している。ナイジェリアの決済サービスのOPay やPalmPayらは、昨年1年間で2億1000万ドルを超える資金を中国企業などから調達していた。
Jumiaが収益化に苦戦した背景には、アフリカの市場は統合化が進まず、デジタル決済も未整備であることがあげられる。さらに、アフリカ諸国の多くは高い輸入関税を課す一方で、地元産の製品が少なくEコマース事業の運営コストは高い。
ここ数カ月間で、Jumiaはルワンダやタンザニア、カメルーンでのオペレーションを停止した。
アフリカにおけるEコマースの収益性は、米国や中国には遠く及ばず、Jumiaをアマゾンやアリババに例えるのはかなり無理があるのが現実だ。さらに、ドイツで法人化を行い、ドバイに本社を置くJumiaは、アイデンティティ上の問題も抱えている。
これらの複数の要因から、投資家らはJumiaの今後に懸念を高めており、昨年のIPOで注目を集めた同社の株価は、大きく下落することになった。