米国内では約340万人がこのセクターで働いているが、3月だけで10万6000人が職を失い、さらに夏までにこの数字は50万人にまで跳ね上がる恐れがあるという。
電気技師や溶接工、配管工、設置業者、建設現場の作業員など、さまざまな業種の労働者が、失職の危機に直面している。関わる分野は、省エネから、機械の維持管理、製造工場までと多岐にわたる。さらにこうした労働者は、米国の屋台骨を支える存在であるだけでなく、有権者でもある。しかも、2020年の大統領選挙で接戦が予想されている州に住んでいる者も多い。
「連邦議会がさらに多くの手を早急に打たない限り、今後数か月で50万人の労働者が職を失う」と、エンヴァイロンメンタル・アントレプレナーズ(Environmental Entrepreneurs:E2)の専務理事、ボブ・キーフ(Bob Keefe)は、4月15日の電話会見で危機感をあらわにした。
比較対象としてキーフは、全米で石炭産業の仕事に従事する人は5万人だと指摘したうえで、「どんな職種も重要だが、仮にこれらの炭鉱労働者の職がすべて失われるなら、ホワイトハウスはどれだけ早急に動くかを考えてみて欲しい」と述べた。
クリーンエネルギー分野はこれまで、アメリカンドリームを地で行く成功を遂げてきた。E2が資金を提供し、BWリサーチ(BW Research)が調査を行った「クリーン・ジョブズ・アメリカ2020(Clean Jobs America 2020)」によると、同セクターの雇用は、2015年以降10.4%増加している。
この報告書の分析によると、中でも雇用の伸び率が最も高いのはクリーンエネルギーとエネルギー貯蔵に関する分野で、再生可能エネルギー、電気自動車、省エネ分野がそれに続いている。全体的に見ると、2019年の時点で、クリーンエネルギーはエネルギー産業における雇用の40%、米国のすべての雇用についても2.5%を占めるに至っていた。
そして今、このセクターの雇用は危機に瀕している。例えば、住宅や事業所の断熱性向上や改装工事によって、建物の省エネ化を進める業務を請け負う企業であるCMSサービス(CMC Services)のティナ・ベネット(Tina Bennett)社長は、3月に同社の売上は85%ダウンし、現場作業を担う技術スタッフは仕事がない状態だと窮状を訴える。
ベネットは電話取材で、「同業者の多くは、従業員の一時帰休やレイオフに踏み切った」と述べた。「こうした産業はロックダウン(都市封鎖)によって危機的な状況にあり、その影響をまともに受けている」