ビジネス

2020.04.30

ヤフー伊藤羊一の「仕事脳」をつくった前職社長との切れない関係 #新しい師弟関係

プラス代表取締役会長兼社長の今泉嘉久(左)と、Yahoo!アカデミア学長の伊藤羊一(右)

新型コロナウイルスの影響で、人との物理的な距離感、コミュニケーションの仕方が変わるなか、「いかに人間関係を育むか」は、この先の大きな論点のひとつだろう。 4月25日発売のフォーブス ジャパン6月号では「新しい師弟関係」に焦点を当て、全55組の師弟を紹介。本誌掲載記事から一部抜粋でお届けする。



ヤフーの企業内大学「Yahoo!アカデミア」学長の伊藤羊一は、「プレゼンの達人」として年間300回以上講演し、孫正義にも一目置かれる。次世代のリーダーを育てる彼の思考の軸は、かつて勤務していたオフィス家具・文具メーカー「プラス」の会長兼社長、今泉嘉久だ。アスクルなどの流通革命を仕掛けてきた今泉と伊藤が共有する思いとは。

伊藤:仕事を考えるときの僕の頭は、今泉さんの脳です。今泉さんのように、仕組みを変えて新しいことをする思考です。いまでも、今泉さんに負けないくらい新しいものが作れるか、日々自問しています。

今泉:僕の師匠は「失敗」。長く会社のトップに立っていると、山ほど失敗をします。でも、その過程でどんどん真理に近づいていく感覚がある。顧客の満足と、従業員の満足を一致させることが経営の仕事だと気づいたのもその一つです。

お客様の要求だけを聞くばかりでは、企業は身を削ることしかできない。儲からないときにこそ、作り方、届け方、売り方をもう一度見直す必要がある。やり方、順番を変えるとビジネスは生まれ変わり、お客様への還元ができる。

伊藤:Yahoo!アカデミアで教育をする立場になって、僕が伝えているのも、まずやってみる勇気をあげることです。今泉さんは、流通の仕組みを見直して、革命を起こした。僕の場合は、人の心に火をつけることで革命を起こす。それが自分の強みで、自分は人を育てることが好きだということに、プラスを辞めて気づいたんです。

今泉:彼が当社にいるときの最大の功績は、私の話を組織全体に落としてくれる役割です。僕が1言ったことを10に拡声してくれて、自己流に判断して組織に浸透させてくれる。組織はフラット型がいいのですが、誰かがトップに代わって大声を出してやらなければいけないときがあるのです。彼には組織をどこかの方向に引っ張っていくという才能がある。なおかつ、若い人と女性を持ち上げる作業をしてくれた。

伊藤:教育の世界で新しいことをやろうと決めた後、実はプラスにいたときもそれをやっていたと気づきました。いまでも年に1回、今泉さんにお話をしにきます。話してみると、1年前の自分といまの自分を客観視できる。コーチのような感じですね。

今泉:かなり年の離れた伊藤君と、同世代のような感覚ですね。僕も彼から影響を受けているのでしょう。自分の言葉で喋っているときも、思い返せば、彼の言葉だったりする。

伊藤君は、感度の悪い話には全然反応がない。その代わり彼みたいな優秀な人が「それいけますよ」と言ってくれたときには、僕は前に進んじゃうわけです。(続きはフォーブス ジャパン 2020年6月号でお読みいただけます)。

伊藤の考える個人と企業の関係性とは。そのほか、マネーフォワードCEO辻庸介、マクアケ代表取締役社長の中山亮太郎、作家の辻仁成から政治家野田聖子まで、全55組の師弟関係を一挙公開。フォーブス ジャパン2020年6月号は、現在好評発売中! ご購入はこちらから。



伊藤羊一◎1967年生まれ。Yahoo!アカデミア学長。90年日本興業銀行(現・みずほ銀行)入行。2003年プラスに転ずる。15年にヤフーの企業内大学「Yahoo!アカデミア」学長に就任。著書『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術(SBクリエイティブ)』がベストセラーに。

今泉嘉久◎1942年生まれ。プラス代表取締役会長兼社長。創業者である父の後を継ぎ83年社長に就任。オフィス用品の配送サービス「アスクル」を始め、「ビズネット」「ジョインテックス」等の新しいビジネスモデルを創造。2019年より現職。

文=揚原安紗佳、写真=平岩享

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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