コロナ禍に登場した5Gは旧メディアの救世主となるか #読む5G

「読む5G」サムネイルデザイン=高田尚弥


また、5Gは新聞の取材にも変容をもたらすと考える。官邸などでの首相のぶらさがり取材は、ニュース番組などで目にするお決まりのシーンだ。新聞記者はこれまで談話をボイスレコーダーやスマホに録音し、それを記事にしてきた。だが実際に現場に居合わせるのであれば5Gスマホで、首相の談話に迫り、映像を撮り、そのまま新聞社のデジタル・サイトにダイレクトに生中継することも可能だ。

もちろん現在の「4Gスマホ」でもライブ配信は可能だ。しかし、ぶらさがり取材である以上、その場に詰めかけた記者全員がライブ配信に挑戦すると、回線がオーバーフローしてしまい、映像が静止画になってしまうことだろう。5G時代には、この足かせが外される。

ヤフー、ライン経営統合発表会
経営統合の発表で、LINEの出澤剛社長(右)と握手するZホールディングスの川邊健太郎社長 (GettyImages)

取材対象は政治に限られない。どの取材でも今後、録音するのではなく、5Gスマホで動画をまるごと撮影、本社のサーバーにでも即時アップロードできれば、その素材をどう料理するかは「編集局」の腕の見せ所だ。

こうなると、テレビと新聞の報道の垣根が取り払われる。新聞社が記事を自社サイトに掲載し、テキスト記事への広告単価がせいぜい「1ページ=0.1円」というレベルでのマネタイズも、動画広告のネットワークを構築し、広告単価を向上させられる。

また前回の記事でも述べた通り、映像編集にAIを導入すれば、ハイライトの自動生成も可能だ。その暁には地方紙でも、担当記者が取材のハイライトをツイッターでつぶやき、その詳報は「自社サイトへ」などと誘導することもできそうだ。このモデルは、後発の小さなデジタルメディアにも適応可能だろう。5Gの活用は、資金力、体力の劣るメディアにこそ、メリットをもたらすはずだ。

インターネットの到来とともにコンテンツの流通経路に革命が起こり、ヤフーひとり勝ちの勢力図が確立した。そして、スマホ志向の世代を取り込んだLINEは、ヤフーとの合流が規定路線となっている。順当に行けば、5G活用による臨界点を見つけ出し、5G+UGC+AIを生かしたソリューションを生み出すのは、ここになるのだろう。そして次のコンテンツ流通モデルの覇者となるのは果たして…。

新型コロナウイルス対策のため外出の自粛要請を受けてリモート勤務が一般化し、さらに通信環境の重要性が増す中、5Gが到来した。この時代において、奇妙なシンクロニシティを感じるのは私だけだろうか。


連載:5G×メディア×スポーツの未来
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文=松永裕司

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