コロナ禍に登場した5Gは旧メディアの救世主となるか #読む5G

「読む5G」サムネイルデザイン=高田尚弥


2005年のYouTube登場以降、2007年にはiPhoneが登場。「スマホ+4G」時代には、UGCもがその市民権を獲得し、LINEなどが隆盛し、旧メディアはデジタル領域において置き去りにされたと表現しても差し支えないだろう。

メディアの主流がデジタルへ移行した事実は2019年度の広告費を見ても明らかだ。日本のインターネット広告費が2兆円を超え、かつてメディアの王様として君臨したテレビの広告費は、年を追うごとに目減りし、今や1.8兆円に。ながらく守って来た首位の座を、ついにネットに明け渡した。 

インターネット広告費には、4マスつまり旧メディアが営むデジタル・ビジネス分も含まれている。よって、旧メディアにも挽回のチャンスは残されており、今後、いかにしてネット広告費の「パイ」を奪い返すのか、戦略の練り直しに迫られている。 

NHKが公共放送から「公共メディア」になった理由


5G時代の到来は、UGCやAIの発達とともに、旧メディアの救世主となる可能性を秘めている。

これにいち早く気づき実行に移そうと画策しているのは、意外にもNHKであるように思う。長らく「公共放送」であったNHKは2018年、3か年経営計画では「公共メディアの実現」を掲げ、看板を掛け替えたのをご存知だろうか。NHKは5G時代の到来を見据え、インターネット上でのコンテンツ展開に本気で取り組むつもりだ。 

2019年5月、改正放送法の成立により放送と通信を隔てる壁は融解した。NHKは全番組をインターネット上で同時配信する方針を打ち出したが、同年11月に総務省がこれに待ったをかけ、押し留めた。

NHK関係者によると、5Gで狙っているのはUGCなどよりも4K/8K、VR/ARといった高画質・高解像度の映像を使用したコンテンツとのこと。実際、試験的に視聴させてもらったNHKの8K映像は、とても手軽とは言い難い「IMAX豪華版」と言えるようなコンテンツだった。IMAXやXR映像が家庭に着地する未来があるのなら、それはかつてサイエンスフィクションの世界として楽しまれた時代を迎えられるということなのだろう。 

VRのイメージ
将来、家庭でもより高画質・高解像度の映像を楽しめるようになるだろう。 (Shutterstock)

しかし、それでは5Gの手軽さ、つまりハンディさが生かされない。 

むしろ、「5G+UGC配信権を確立せよ 」の記事で紹介したように、5G対応のスマホの恩恵を受けられるのは、長大なテレビカメラを複数稼働させる予算のない地方局などが5G対応のスマホを生かした恩恵を受けられる。多数の5Gスマホによる野球中継も可能になり、しかも中継車も持ち込まず本局でスイッチングすることもできれば、複数アングルのままオンエアもできるだろう。

地方局の財政難により、高校野球の地方大会の中継さえままならぬ…とささやかれるが、5Gスマホで生中継を実施すれば、コスト削減につながり、地方大会中継継続の道筋も見えて来る。 

新型コロナウイルスの影響で生でのスポーツ観戦が難しく、無観客で試合を行う代わりに、これまでにない多数の5Gスマホを持ち込みストリーミング中継するのも、ひとつのアイディアだ。ポストコロナの新時代に向け、新しいスポーツの観戦方法を見据え、ビジネスとして検証を重ねる好機でもある。スピード感を持ち、新しい試みに挑むのは、どの企業になるだろう。テレビか、通信会社か、それとも新興企業か…。
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文=松永裕司

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