なぜお金を払うのかを教える
そもそも、買い物をする際に、なぜお金を払わないといけないのか。大人からすれば当り前の話かもしれないが、このことを子どもと話し合うことは重要だと考えている。
わが家では、スーパーマーケットで食材を買って食事をつくることもあれば、レストランで外食することもある。どちらにせよ、メニューで食べ物を選んだり、店内で商品を選んだりする際は、値段について確認し、会計する際は子どもと一緒にレジに行き、支払いの場面に立ち合わせるようにしている。
そのようにしていると、時折、子どもから出る質問がある。「お店で買って家でつくるほうが、レストランで食べるより安くない?」というものだ。
たとえば、カレーをつくる際に、野菜やルーなどの材料を5人分買って、その値段を5で割って算出した1人あたりの単価はおそらく200~300円ぐらいだろう。しかし、レストランで頼めば600~800円ぐらいはするわけだから、子どもの指摘は正しいといえる。
それでは、自分でつくるよりも割高なレストランに行く人がいるのはなぜか。理由はいくつもあるかもしれないが、自分たちでつくらなくてもいいし、片付けもしなくていい。食事をする場所として店を使わせてもらっている。これくらいの回答であれば、子どもからでも出てくるだろう。
そして、それらの回答は正解である。自分たちの代わりに料理をつくったり、片付けをしてくれたりする人たちのお給料、店を使わせてもらっている対価としての料金、これらの値段が材料費に乗っかってくるわけだから、自分でつくるよりもレストランで頼むと高くなる。
つまり、店で売られているものの値段には、働く人たちが必要としているお金も含まれている。そのお金を払わずに、万引きして商品を持っていくということは、そこで働く人たちを生活できなくさせてしまうということなのだ。
「怒られるからやっちゃダメだよ」ではなく、自分が万引きをすることで、そのお店の人たちがご飯を食べられなくなってしまうと、自分のとる行動の影響力をしっかりと教えなくてはいけないだろう。
この件を知人と話し合っていたときに、話題になったことを最後に紹介しよう。最近の子どもはSuicaなどの交通系カードでキャッシュレス決済をすることが多く、会計の際に現金を払うことが少なくなっているため、買い物の感覚が筆者たちの世代とは違うということだった。
筆者はキャッシュレス自体を否定する気はないが、自分の子どもたちには現金でお小遣いをあげて、目の前で各自の豚の貯金箱に貯めさせている。まだ、幼いため、数字の概念はないとは思うが、使ってしまうと貯金箱が軽くなり、貯めていけば重くなるという物量的な変化が、数字の概念を子どもたちに普通とは違う角度から教えられているという実感はある。
政府の推進策もあり、日本でもキャッシュレス決済が浸透しつつあるが、子どもの金融教育という観点からは、すべてではなくとも現金の利用を続けていただきたいと思う。
連載:0歳からの「お金の話」
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