若者の間で薄れゆく沖縄戦の記憶 これからの慰霊について考えたこと

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──入学後、スマイライフではどのような活動をしていたのですか?

スマイライフは、沖縄国際大学社会文化学科の学生で構成されているサークルで、米軍基地や沖縄戦の戦跡を、学生たちが自らガイドしています。主に県内外の学生や団体を対象にガイドを行っていますが、ディスカッション形式で沖縄について意見交換をしたりすることもあります。また、自分たちがより深く沖縄戦について理解するために、戦争経験者の方の体験談を伺ったり、フィールドワークを行ったりしています。

「いつまで被害者づらしている」と言われて


──こういった社会問題と向き合うサークルには、真面目で思想信条の強い人が多い印象ですが、スマイライフはどうでしょう?

私は、テニスや旅行のサークルと同じ感覚で、友人に誘われて気軽に入りました。確かに、戦争や基地の問題はハードルの高い社会問題かもしれません。でも、沖縄で暮らす私たちにとって、戦争や基地は日常です。

平和学習や基地問題について考えることは決して意識が高いからではなく、日常の自然な話題なのです。もちろんメンバーのなかにはそういった社会問題に対して思いの強い人もいるし、そうでない人もいます。でも、真正面から取り組んでいるという感覚は薄いような気がします。

──私も沖縄を訪れた際に、伊波さんにガイドをしていただきましたが、伊波さんたちとの会話で顔を現す「ある種の矛盾」がすごくリアルだなと思いました。例えば、戦闘機が飛んできて「うるさい」って言ったそばから、アメリカ軍人の彼氏の話を始めるとか。

私にはアメリカの軍人と結婚している親戚もいますし、友人には基地のなかでアルバイトをしている人もいます。ガイドをしているメンバーは、ある意味、沖縄の縮図だと思うのです。たまに、基地返還とかを叫んでいる思想信条の強い学生たちだと思われることもあるのですが、実は人によって考え方は全然違います。でも、みんな仲良くできる。それは決して不思議なことではなく、これが沖縄の日常なんです。

──ガイドをしていて印象的だった経験はありますか?

スマイライフのメンバーになって最初のガイドですね。県外から来た男子学生を沖縄戦の戦跡に案内したのですが、そのとき、「沖縄の人って、いつまで被害者づらしているんですか?」って言われたのです。なんと答えていいのかわからず、ショックでした。

いまだから思うのですが、このとき私が何も言うことができなかった理由は2つあったと思います。1つは、これまで県外の人とかかわることがほとんどなかったので、あまりの価値観の違いに驚いたことです。そして、もう1つは、自分自身が沖縄戦などの過去の歴史を断片的にしか理解しておらず、現代の沖縄とリンクできていなかったからだと思います。

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スマイライフでは米軍基地や沖縄戦の戦跡を、学生たちが自らガイドしている
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文=谷村一成

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