マルチに挑戦する日本人書道家が「美」を見出す場所とは?

書家の岡西佑奈さん


──本来、自然には直線は存在しない。岡西さんの作品には、人工的に引かれた直線ではなく、自然がつくる曲線の美につながるものを感じます。国境や民族のように、なぜ人はさまざまな事を分断したがるんでしょう。

それが人間ですよね。人間が欲望を持たずして生きることは難しいことです。欲望を持たなければ、逆に人間らしくない。でも、自分の抱えられる範囲の、行き過ぎない欲望の範囲で調和して生きるということが大切なのではないかと思います。


ありのままを表現した「儘」

──作品では海の青を描かれています。地球温暖化や自然災害が世界各地で起こるなか、いまの地球環境をどのように見られていますか。

地球温暖化や、海洋プラスチックに汚染された海や、化学物質で汚染された大気など、あらゆる環境が人間の欲望で破壊されてきている状況は見てわかります。

その状況を見て大変だなと思って何もしないのか、それとも自分にできることを何かするか。私は何かをしたい。幼いころからの母親の影響もあり、特に海を守りたいという気持ちが強く、それが私たち人類を守ることにつながると思っています。自分やいま生きている世代だけの問題ではなく、未来に残していくものとして、海を守りたいですね。子孫には良い地球環境のなかで過ごしてもらいたいです。



──とはいえ、地球環境のためにペットボトルの飲み物を避けるみたいなことって難しいですよね。

すごく難しいですね。でも、できることからやればいいと思います。例えば、商店でビニール袋は要りませんと、豆腐一丁をカバンに入れて帰るとか。たった1人で100個と、100人が1個ずつは同じ力になります。個々の小さな動きが、すごい力になると思うのです。

実際、できることをやると気持ちいいですよ。マイバックを持って買い物するなど、周囲も真似をしやすいことを、小さなことでも行動していきたいですね。
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インタビュー=三宅紘一郎 校正=鈴木広大 撮影=藤井さおり

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