新型コロナで表面化、米国の医療制度に根付く人種格差

Photo by Jeenah Moon/Getty Images

米国での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行では、黒人が感染・死亡する確率が不釣り合いに高いことが判明し、同国の医療制度に存在する人種格差が明るみに出た。

感染者の人種比率を人口構成比率と比較して分析すると、ノースカロライナやサウスカロライナなどの州では黒人の感染者が異常な多さとなっている。この統計に驚く人は多くない。米国は建国以来ずっと、構造的・組織的な不平等を抱えてきた。教育制度から労働市場、住宅、投獄率に至るまで、黒人は多くの構造的障壁に直面している。

コンサルティング会社アドバンシング・ヘルス・エクイティー創業者のウチェ・ブラックストック最高経営責任者(CEO)は「COVID-19は人種にかかわらず感染するが、特に黒人が感染し深刻な合併症に陥りやすくなっているのは、構造的な人種差別などの組織的要因によるものだ。何世紀にもわたり合法化されていた人種差別に加えて、レッドライニング(黒人居住区に対する融資差別)などの最近の慣習や政策が貧困や不平等を生み、黒人コミュニティーを弱い立場に置いている。全米各地の都市や州からの初期データから、既にCOVID-19が黒人コミュニティーに大きな影響をもたらしていることが分かっている」と言う。

COVID-19に関してはまず、どのような不平等が存在するのかを理解するのが重要だ。黒人の間では、コロナウイルスに感染した際に重症化の確率を高める要因となる肥満、糖尿病、喘息の比率が高い。また、黒人は健康的な食料が得にくい地域に暮らす傾向が高い場合もある。さらに、黒人は健康保険への加入率が低いとする調査結果もある。

調査結果からはさらに、黒人やヒスパニック系の住民が受ける医療サービスの水準が他の人種と異なることも示されている。黒人の患者は痛みを訴えても親身に対応してもらえない傾向があるとされる。ハリエット・ワシントンは2007年の著書『Medical Apartheid(医療アパルトヘイト)』で、黒人が医療分野の実験台として利用されてきたむごたらしい歴史を詳細に記している。

もう一つ特筆すべき点は、人々の生活に欠かせない業務に従事する「エッセンシャルワーカー」での黒人の割合が高い点だ。結果として、黒人は他の人種と比べて感染リスクが高くなる。「私たちはエッセンシャルワーカーが多い。黒人居住区では検査実施数が限られ、ケアが不足し、高水準の医療サービスも不足しており、さらに慢性疾患患者の比率の高さが相まって、黒人コミュニティーはこのパンデミックにより大きな影響を受けている」とブラックストックは解説する。
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編集=遠藤宗生

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