( 前回の記事:「検事さんへの手紙」は何を意味する? これは本当に冤罪かもしれない )
西山さんについて「発達障害があるのでは」という私の疑問に「あるかもしれません」と答えた角記者は「幼稚園の時に、一人だけ運動場を反対回りで走ったそうなんですよ」と言った。
けっして私が発達障害について、詳しかったわけではない。当時の私の理解と言えば、「子どもが教室でじっとしていられず、歩き回ってしまう」とか「人とうまく会話を交わすことが苦手で誤解されやすい」など、漠然としたイメージでしかなかった。
ただ、この時に聞いた「一人だけ反対回りで走った」という話は、発達障害について浅はかな知識しか持ち合わせていない私の印象に強く残った。昔なら「ちょっと変わった子」と言われた子が、現代医学でその「変わった行動」が発達障害の特徴として分類されることはままあるからだ。
「なんでそんな嘘をつくんだろう」
秦「他にもあるの?」
角「嘘をつくらしいんですよ」
秦「嘘? どんな嘘を?」
角「第2次再審請求書に出てくるんですが、病院の同僚らに『自分の両親は本当の両親ではない』みたいなことを言っているらしいんです」
そこで角記者は、打ち合わせをしている大津支局の窓際にある応接コーナーからいったん離れ、支局内の自分のデスク上にあるノートパソコンを取って戻ってきた。応接机の上でパソコンを開き、キーボードをたたきながら裁判資料のデータを開いた上で、再び説明を始めた。
角「運動会の話は請求書にこうありますね。『請求人(=西山さんのこと)は幼児期から対人関係が不器用であった。例えば、周囲の注目を浴びるために、幼稚園の運動会でグラウンドをわざと反対回りに走った』。あと、同僚に『自分は両親とは血縁が無い』『実父母はすでに亡くなっており、遺産を遺してくれている』などと言った、と書いてありますね」