山岸氏「チューハイはこれまで、果実のシズル感を美味しそうに見せるのが一般的でした。ほろよいのリニューアルも同様に、シズル感を重視したデザインを作っていたのですが、途中で違和感を抱くようになりました。ほろよいのアルコールの度数は3%と、他のチューハイと比べて低めです。手に取ってくれる方って実は『ほっとしたい』とか『ソファの上でくつろぎながら飲みたい』という人が買ってくれているんじゃないかと思ったんです」
顧客のインサイトを考え直した結果、シズル感を最小限にし、気持ちがほっとするような可愛さや抜け感を大事にデザインを進めた。色合いもパステル調を取り入れたことで、購買数が大きく変化したという。顧客の求めているシーンに違和感なく溶け込んだのだろう。
「ほろよい」シリーズリニューアル前(上段)、リニューアル後(下段)
飲料水で幸せを届ける。天然水ブランドだからできること
今年3月に再びリニューアルを迎えた天然水スパークリング。ラベルには鮮やかな水色が採用され、より爽快感が増したデザインになっている。ここでも、山岸氏は1日に6本も愛飲するへビーユーザーに意見を聞き、その人に強烈に刺さるデザインを目指して作ったそうだ。
3月10日にリニューアルした「サントリー天然水 スパークリング」シリーズ
最後に、デザインを通して顧客にどのような体験を提供したいと考えているかを聞いた。
山岸氏「飲料は、人々の一番身近にあり、多くの人を幸せにできるものだと思っています。気分が晴れないとき、むしゃくしゃするときも、この商品で少し前向きな気分になったり、一瞬でも幸せな気分になったりしてもらうことが、私がお客様に届けたい体験です」
デザインによって人を幸せにすることができる──。小学生の頃、自動車メーカーでデザイナーをしている父親から聞いたこの言葉が、山岸氏がデザイナーを目指すきっかけになったそうだ。これが“人を幸せにするデザイン”を作り続けるための指針になった。
商品を本当に求めている人に届けるために必要なこと。それは、その商品のコンセプトをストレートに届けること。「そうそう、この商品を探してた」そんな出会いを作るために、山岸氏は全力でデザインと向き合っている。