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2020.04.23 08:00

デザインは人を幸せにできる。サントリー「天然水スパークリング」がリニューアルに込めた思い


このミッションからデザインやスローガンを考えていくうえで、山岸氏が大切にしたのはブランドの原点でもある水源や自然の場へ足を運ぶことだった。

山岸氏「五感をフル活用してインスピレーションを得る機会を特に大切にしましたね。経験したり体験したりしないと、想いをもって伝えられない気がしています。私自身が天然水ブランドに愛着を持っていなかったら、デザインから伝わる魅力は少ないでしょう。ブランドを理解することが、お客様に魅力を伝える際に必要だと思っています。

水源は都内からすぐに行けるわけではありません。だからこそ、訪れる電車の中でぽこっとアイデアが浮かび、これまで考えていたことがつながる瞬間もあって。自分が日々いる環境から離れると、アイデアも出やすくなるというメリットがあると感じています」

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その商品にまつわる体験があるからこそ、想いを伝えるデザインができる。現在、山岸氏は社内で選ばれる「天然水アンバサダー」としても活動中だ。長野県に建設する天然水の新たな工場のデザイン設計や、水源のある国立公園の冊子作成やワークショップの開催などを通して、水の大切さや天然水の魅力などを伝える活動も行っている。

山岸氏「あらためて“天然水ブランドで何を提供すべきか”を考えると、商品だけでなく、人々の身近に自然を届けることがその役割だと思ったんです。商品自体は100円程度で買えてしまうもの。だからこそ、より多くの人に届けることで、自然の恵みを知ってもらうことがこのブランドの強みになると、スノーピークとのコラボによって気がつきました」

コンセプトを削ぎ落し、ストレートなデザインを重視


デザインの刷新やスノーピークとの共同開発によって、多くの人々に受け入れられる商品となったサントリー天然水スパークリング。「生活者のニーズが多様化する中で、受け入れられるデザインを作るために必要なことは何か」と山岸氏に聞くと、「お客様のインサイトを捉え、一番わかりやすく、ストレートに伝えること」と答えてくれた。

山岸氏「消費者調査も行いますが、人それぞれ感じることは違うので、意見がぴったり一致することはありません。また、さまざまな人から聞く情報をすべて盛り込むと、中途半端なデザインができてしまう。なので、ファンの強烈なペルソナを作り、その人にめちゃくちゃ刺さるメッセージをデザインに落とし込んでいきます。すると商品のコンセプトもクリアに表現されるので、ペルソナに近い人のもとへとメッセージが届けられるのです」

天然水スパークリングも一目で「爽快だ」と感じてもらうこと、「これを探していた」と思ってもらうことを目標とした。その中で天然水ブランドである安心感の担保、炭酸水ならではの爽快感や刺激が伝わることを意識して作ったという。

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また、山岸氏が担当した缶チューハイ「ほろよい」のリニューアルでも同様の考え方でデザインをリニューアルした結果、前年度割れだった売り上げが回復した。
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文/もりや みほ 編集/庄司智昭 撮影/伊藤圭

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