「新しい、甘い生活」を表現したクルマ フェラーリに見る高級車の新しいあり方

新型「フェラーリ・ローマ」

新型「フェラーリ・ローマ」発表会に参加した自動車担当の青山鼓が、自動車ジャーナリスト小川フミオにその真価を尋ねる。


──フェラーリの新型クーペ「ローマ」が誕生しました。「これがいまという時代に求められているフェラーリです」とは、2019年11月にローマで行われたお披露目の場での、フェラーリ社でマーケティングと販売を統括するエンリコ・ガレリア氏の言葉です。

キャッチコピーがある点が新しいですね。従来のフェラーリでは、車名がそのモデルを表現していました。エンジンの気筒数だったり排気量など。でも「ローマ」の発表会場には「La Nuova Dolce Vita」の文字が掲げられていました。そこに意外性がありましたね。


大きく掲げられたキーワード「新しい、甘い生活」。

──日本語にすると、“新しい、甘い生活”ですね。原案は、イタリア人の映画作家フェデリコ・フェリーニが1960年に発表した「甘い生活」でしょうね。会場に用意されたスクリーンには、映画のシーンがいくつも映されていましたね。発表会場で会ったロマンスグレーのローマ人は「シビれる」と喜んでいました。


会場では繰り返し、賑わっていた1950年代のローマを彷彿とさせるムービーを上映。

大好きな映画です。ローマがいまよりずっと華やかなだった時代の話です。ミラノなんて工業都市にすぎず、文化の神髄はローマにこそある、と胸を張って言えた時代。ベネト通りという目抜き通りが舞台で、ゴシップ記者のマルチェロ・マストロヤンニを主人公に、当時のローマのさまざまな階層の人々の生き方が描かれています。

余談ですが、ベルベットアンダーグラウンドのファーストでボーカルだったニコも出演していたり、当時、チネチッタという撮影スタジオがあったローマには、世界中からひとが集まっていたことがうかがい知れる映画でもあります。そんな活気ある時代へのオマージュが、今回の「ローマ」のメッセージなのでしょう。

──「アンダーステイトメント」という表現がデザイン部長のフラビオ・マンツォーニ氏から出たのも新鮮でした。

アンダーステイトメントとは、英国の自動車メーカーが好む表現で控えめに品の良さをアピールすること。街中でスタイリッシュに見えることをかなり意識しているらしく、「フィアットぐらい目立たずに市街地を流せますよ」とマンツォーニ氏が言ったのがおもしろかったです。


ステージで車を解説するマーケティング・販売統括のエンリコ・ガレリア(左)とデザイン部長のフラビオ・マンツォーニ。
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text by Fumio Ogawa | edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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