東京・お台場にあるフジテレビの大きな収録スタジオで、マスクをつけたカメラマン、スタイリストやヘアメイクなどの撮影スタッフに囲まれていたのが、俳優の伊藤健太郎と石橋静河だ。
4月29日、「FOD」と「Amazon Prime Video」から配信がスタートするドラマ『東京ラブストーリー』に出演するふたりは、Forbes JAPANが30歳未満30人の次世代を担うイノベーターを選出する「30 UNDER 30 JPAN 2019」の受賞者でもある。
多くの人が終わりの見えない不安を抱える今、この状況を二人は役者としてどう乗り越えていくべきと考えているのか。
そして、誰もが人と距離を取ることを余儀なくされている今だからこそ、人と深く関わることの大切さを実感させてくれる『東京ラブストーリー』の、時を経て増した作品としての魅力とは。
「あの『カンチ』を自分がやるのかと。オリジナル作品のファンの方も多いからこそ、プレッシャーがなかったと言えば嘘になりますね」
カンチこと、永尾完治役として声がかかった時のことを、伊藤はこう振り返った。バブル崩壊後の1991年にフジテレビで放送された『東京ラブストーリー』は、最高視聴率32.3%を記録。月曜日の夜は、多くの若い女性がこのドラマを自宅で観ていたために、繁華街から人影が消えたという逸話も残っている。
伊藤も石橋も生まれる前に日本中を熱狂させた伝説的なドラマが、現代版として蘇る。見所は、時代が変わったことに伴うビジュアルの変化と、カンチとリカの変わらない人間性や、ふたりを中心とした恋愛模様だろう。
前作の放送から約30年。現代版のカンチはタバコを吸わず、肩幅の広いスーツは細身のスーツに変わった。そして、リカのように仕事を謳歌し、自分から男性にアプローチをするような積極的な女性はもう珍しい存在ではなくなったのかもしれない。
カンチを演じた収録時期のことを、伊藤はこう振り返った。
伊藤健太郎
「前作の放送から時間が経っているから、もちろん衣装やセットは大きく変わっています。でも、カンチって現代の男性として描かれてもなんの違和感もないんです。ちょっと不器用だけど、素直ないい奴。リカのような都会的な女性を、最初は怖いと感じてしまうようなところなど、共感できる点は多くありました」
2014年の役者デビューから、18年に放送されたドラマ『今日から俺は!!』など、多くの作品への出演を経て、幅広い年代から支持を集める俳優となった伊藤だが、『東京ラブストーリー』が、初めての王道の恋愛物語への出演となった。
カンチには同世代の男性として感情移入もしやすかったというが、恋愛物語にはつきものの、激しい感情の変化を演じ分けることが、今回の大きなチャレンジになったという。