4月14日のニューヨーク・タイムズ紙上で最も多く読者の関心を集めたのは、冒頭のメッセージを掲げた広告ページであった。これは、WHO=誰を意味するだけでない。このキャンペーンを発起したのは、台湾で活躍するユーチューバーやデザイナーら5人。クラウドファンディングで2万6000人から支援を受け、今回の広告掲載に至った。
新型コロナウイルスの封じ込めの成功例として、国際社会から高い評価を得ている台湾であるが、独立を認めない中国からの圧力の中で、WHOへの加盟が許されないなど、抱えている問題も多い。そのような台湾で暮らす彼らが、ニューヨーク・タイムズの広告を通じて世界の人々に伝えたいメッセージとは一体なんだったのだろうか。
広告に秘められたWHOへの非難
上下対称になるよう白黒にデザインされた広告の上部、黒い背景から青文字で浮かび上がる「WHO can help?」という問い、そしてそれに応答する「Taiwan.」という文言が目を引く。新型コロナウイルス封じ込めに成功した台湾にふさわしく、多くの人にとって頼もしいメッセージだ。
(台湾の蔡英文総統のフェイスブックより)
しかし注意深い読者なら、この広告が単なる台湾の「協力表明」にとどまらないことに気がつくだろう。広告の中でメッセージは以下のように続いている。
「誰が助けることができるのか?台湾。隔離の時代に、私たちは連帯を選ぶ。あなたは一人じゃない。台湾はあなたと一緒です。私たちはあなたの身の回りで何がおきているか知っています。それがどれほど苦しいことかも知っています。なぜなら、台湾は2003年にSARSの蔓延という大変な事態を経験しているからです。WHOから今も隔絶されている台湾は、そのことを知っています。
私たちは、学校と企業を閉めることなくアウトブレイクを抑え、すべての人にマスクを確保する方法を共有することで、国際的に貢献しています。台湾は過去数週間で、世界中の医療専門家をサポートするために、1600万以上の医療用マスクを提供しています。また、米国とEUとタッグを組んで、最先端の感染迅速検査とCOVID-19に対応するワクチンに取り組んできました。誰が台湾を孤立させることができるというのでしょうか? いえ、誰も。私たちは支援のためにここにいます」
「誰が助けることができるのか」というフレーズには、WHOへの批判が隠されている。「WHO can help?」を直訳すれば「誰が助けることができるのか/世界保健機関に助けることができるのか」ということになるが、この「WHO」のダブルミーニングに、非難の意図を汲み取らないわけにはいかない。
このキャンペーンの直接的な発端は、WHOのテドロス事務局長が4月8日の会見で、自身がインターネット上で人種差別的な中傷にさらされているとし、「個人攻撃は台湾から来ている」と、台湾を名指しで非難したことがきっかけだ。
CNNによれば、台湾の蔡英文総統はテドロス事務局長の発言に強く抗議。「我々は長年、国際組織から締め出されており、誰よりも差別や孤立の意味合いを知っている」と反論した。さらに台湾の法務部の捜査部門は発言から2日後、「人種差別的な中傷を行っていたのは、台湾の住民を装った中国のネットユーザーだ」と表明。ユーザーの発信元を追跡し、テドロス事務局長を中傷した人々が中国本土にいることを割り出したという。