在宅勤務で睡眠量が増えても大丈夫な理由

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十分な睡眠を取れなければ、心臓の方では高血圧の問題や糖尿病、脳卒中、心臓病などのリスクが増す。睡眠はホルモンを調整するものなので、睡眠不足の人は(多くの場合10代前半から)太り過ぎの危険性がより高くなることも示されている。慢性的な(あるいは生涯の)睡眠習慣の乱れは、うつ病やリスクを取る行動、その他のさまざまな学習・思考・労働・反応に関した問題と関与している。

長期記憶の問題もまた睡眠不足と関与していて、睡眠が不足すると悪化する。米国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ所長は「睡眠不足や睡眠の喪失はこれまで、アルツハイマー病患者における有害なタンパク質の広がりと記憶障害の悪化と結び付けられてきた」と述べている。

コリンズはNIHの最近のブログ記事で機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)の新たな研究に言及し、睡眠が私たちにとって良いものであるだけでなく、「血液と脳脊髄液(CSF)のリズミカルな波を誘引し、それが洗濯機のすすぎのように機能して脳から有害な老廃物を定期的に流し出してくれる可能性がある」と述べている。

そのため、最適な睡眠を取れば寿命だけでなく生活の質も改善されるのだ。現在世界が直面しているような状況では、健康をありとあらゆる手段で改善することが必要だ。つまり、1日のうち公共交通機関や車での通勤に費やす時間が短くなり、その時間を睡眠に使っているのであれば、それは良いことだ。

年齢別の推奨睡眠時間


睡眠のニーズを大きく左右するのは脳の発達と体の成熟だ。しかしこのニーズは、年齢や健康状態、ルーティン、食事のパターン、薬の使用、日光を浴びるかどうかなど個人によって異なる複数の要因によって変化する。しかしこうした中でも、最適な睡眠時間を決める尺度として最も使いやすいのは年齢だ。

米国睡眠医学会(AASM)と米国小児科学会(AAP)は、年齢別の推奨睡眠時間を発表している。それによると、望ましい睡眠時間は4~12カ月の乳児は昼寝も含め1日12~16時間、1~2歳の幼児は昼寝も含め1日11~14時間、3~5歳の幼児は昼寝も含め1日10~13時間、6~12歳の子どもは1日9~12時間、13~18歳は1日8~10時間、18歳以上は1日7~8時間だ。

世界では現在、これまで前例がないほど毎日状況が変化を続け、いつものルーティンを維持できなくなっている。その中で、睡眠(特に良質な睡眠)を最優先事項とすることが感情や精神、そして身体の健康において非常に重要だ。

毎日のストレスを管理し病気と闘う能力は、免疫系や体が最適な状態にあるかどうかにある意味ではかかっている。睡眠を優先事項とし、通勤する必要がなくなったことで生まれた「追加の」数時間を、体が必要とする睡眠に使うことが必要だ。

翻訳・編集=出田静

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