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2020.04.27

感染しないよう神経を張り詰めるがん患者と家族に。医師らが示した明快な言葉

がん患者と家族、医療従事者など600人もの参加者に各分野のスペシャリストが応えた。


Q:予防、そして正しい情報の摂取について


・佐々木
私は今も電車通勤ですが、消毒していない手を口元や目に持っていかないなど基本的なことからとても気を使っています。知人の中には、診察など人と距離の近い時には衣服を変える人もいます。最低限インフルエンザ流行時と同じように、気を付けることが大事です。

・天野
私のところ(全国がん患者団体連合会)にも多くの相談が来ますが、患者の症状・状態によって差があります。基本的には自分の身は自分で守るということですが、守りきれない人がいるから、まず不要不急の外出を控えましょうということです。

・秋山
マギーズ東京でいろいろな方と接していると、心配しすぎてちゃんとご飯を食べていない、水分もとっていないという人が見受けられます。患者にとっても、その家族にとっても在宅はストレスが溜まります。ストレスをマネジメントすること、それは会話することでもありますが、とても大事なことです。

・勝俣
10秒息を止めていれば大丈夫とか、デマが飛び交っていますね。SNSなどからではなく、厚生労働省、国立感染研究所、海外がん情報リファレンス(JAMT)など、公的・専門機関からの情報を注視してほしいです。

・大須賀
ネットなどに広がる情報は不正確なものもあります。また、たとえ医師が発信していても、医師個人で出している情報は不正確な場合があります。複数の専門家が検証した上で出している情報を見るようにしてもらいたいです。それは、政府、公的機関、学会などが発信している情報です。これらは複数の専門家で確認をして出されています。日本であれば厚生省や専門家会議などが出している情報になります。海外ですと、WHO、米国のCDCやNCI、英国のNHSなどになります。それらの情報の一部は私たちも日本語訳して提供しています。

Q:心の持ち方


・秋山
だれかとつながって会話ができることでかなり心配が軽減します。対面や行動が制限され、病院に行っても時間が短い。みんなが不安や迷いのなかで今日のオンラインの場やSNSでもいいので、だれかと話すことが重要です。現在では対面での支援をセーブしている団体でも、電話やメールなどの窓口を広げているところもあります。わたしのところ(マギーズ東京)でもふだんあまりしていない電話などを活用しています。

・天野
対処法に関しては、例えば日本心理学会のWEBサイトで米の心理学会の和訳があります。『もしも距離を保つことを求められたなら:あんた自身の安全のために』という内容のものです。重要なのはストレスを感じている自分をまず認めることからはじめるという点です。ストレスを感じていることに無自覚な人も多い。みんな表情がこわばっています。医療従事者でもそうです。そのうえでの対処法がここには書かれていて、信頼できる情報を獲得し、日々の生活習慣を保ち、バーチャルを活用してでもつながりを保つべきなのです。

参考:もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために
参考:日本臨床腫瘍学会・がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A

Q:最後の過ごし方について


新型コロナは、多くの人に制限を強いる。それは終末期の患者と家族にとって辛い現実を意味する。標準治療を終え、最後の旅行にすら行けないという参加者からの声もある。

・佐々木
多くの医療機関が、通常の入院患者にも面会制限・人数制限を設けている現状があります。感染の流行次第では、まったく面会もできない状況が起こりつつあります。日本全国の人が知るべき実情です。

・秋山
ホスピスでも同様です。最後の時間なのにという悲痛な声が聞かれます。せめて携帯電話の持ち込みといった、顔を見たり声を聞いたりなど、つながりが感じられる工夫が必要です。あなたは「一人じゃない」と感じられる環境です。

・勝俣
病院全体的に言えば、感染に陽性でも陰性でも面会の制限を設けている実情があります。ただ終末期に関しては特別に許可するところもあります。陽性であった場合が問題なので、そういった場合は、秋山さんのおっしゃるように携帯などの活用ということになると思います。

グループ対話を経てもなお、多くの参加者が意見を交わした

登壇セッションのあと、6〜7人のグループに分かれディスカッションが行われた。イベントは予定の時間を大きくオーバーしてもなお、大小の質問や議論が続いた。

今回の参加者は、34%ががん患者・経験者、そして医療従事者が31%、そして家族や友人などだ。立場の違うそれぞれが情報を求めていた。その熱量に、医療・研究の最前線で活躍するスペシャリストが応えた。多くの当事者たちが望んだこの「機会」が、かならず安心につながっていくだろう。

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文=坂元耕二

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