コロナ禍でつながる渋谷のチカラ コミュニティによる飲食店救済の動き

「SHIBUYAフードロス解消 おいしい助け合いプロジェクト」

新型コロナウイルス感染拡大の終息が見えない中で、あらゆる現場で様々な課題が発生している。行政による支援にあまりスピードを感じられず、暮らしも仕事もこれまで通りでいかなくなった世界では、個人や店舗など、小さな主体の行動力が高まっている。

同様に機動力を発揮しているのが「コミュニティ」と呼ばれる存在だ。この数年、オン・オフとわず、趣味や目的でつながるコミュニティが活発化しているが、それがこうした緊急時に頼れる存在となっているようだ。

コミュニティマネジメントの専門家であり、筆者が遂行しているまちづくりプロジェクト「渋谷をつなげる30人(以下、渋30)」のアドバイザーも務める長田涼氏は、「コミュニティは“関係性の集合体”。個々の関係性が集まるからこそ、様々な価値を発揮できます。オンライン・オフライン問わず、日常的にコミュニケーションを取り合い、信頼関係が構築されたコミュニティほど、緊急時に起こる様々な課題に対応するスピードと質が高い」と話す。

では、2016年から企業・行政・NPOによるクロスセクターで取り組んできた「渋30」のコミュニティではどんな力を発揮しているのだろうか。3月から始まったプロジェクトを例に紹介したい。

「三方よし」の助け合いサイクル


3月2日からの「全国一斉休校」要請は、特に共働き世帯の働き方に大きな変化をもたらし、生活サイクルの見直しを余儀なくさせた。また、外出の自粛要請も日増しに強くなり、飲食店が大きなダメージを受け、大量の売れ残りを生んだ。

こうした状況に応じ、「渋30」のメンバーでもあったママコミュニティ「NPO法人代官山ひまわり」と渋谷本拠の企業ママカラが、「SHIBUYAフードロス解消 おいしい助け合いプロジェクト」 を始動。フードロスの危機に瀕する食材を、プロの料理人が「おいしすぎるお惣菜」 に調理し、子育て世帯を中心に販売するという、地域の企業・店舗・子育て世帯の困りごとをかけ合わせた「三方よし」の助け合いサイクル作りに立ち上がった。


当日実際に販売されたお惣菜セット

そこで課題となったのが、出来上がった惣菜の受け渡し場所の調整であったが、矢継ぎ早に「渋30」でのつながりが活用され、コミュニティメンバーであった京王不動産や「渋30」を主催するSlow Innovationに相談すると、ものの数時間で無料で受け渡し場所を確保することができた。

この社会実験では、メンバーである区議会議員、定額テイクアウトアプリ「POTLUCK」の起業家、クリエイティブエージェンシー「ハツメイ」、パーソルテクノロジースタッフも賛同者として試験購買した。

その後、区が4月14日から「フードデリバリー利用促進キャンペーン」を開始したり、そして4月20日からPOTLUCKらによる家庭向けの配送料込みの定額デリバリー企画がスタートした。

また、代官山ひまわりを中心に、家庭向けテイクアウトに喜ばれる要件のヒアリング(味付けは薄めに、子どものことを考えてアレルギーの表示、など)を行い、飲食店にニーズを伝えるという展開も広がっている。
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文=加生健太朗

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