キングス・カレッジ・ロンドンならびにオーストラリア国立大学(ANU)が、オックスファムの依頼で調査を実施し、新型コロナウイルスが世界の金銭的な貧困におよぼす短期的影響を推測した。この調査では、世界銀行が「国際貧困ライン」として設定している1日あたり生活費1.90ドル(最貧国)、3.20ドル(低中所得国)、5.50ドル(高中所得国)をベースにしている。
この調査結果によれば、世界的な貧困は1990年以来初めて、3つの貧困ラインすべてで拡大する。貧困の削減に取り組んできた10年分の進歩が、世界的に失われてしまう可能性があるのだ。サハラ以南のアフリカや中東などの困窮する地域などは、新型コロナウイルスの封じ込め策によって、30年分の成果が帳消しになってしまいかねない。
収入20%減などを含む最も深刻な状況下では、1日あたり収入が5ドル50セントを切る人が5億4800万人追加される。5ドル50セントは、世界銀行が定めている貧困基準のひとつだ。
2020年4月14日と15日には、20か国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)と国際通貨基金(IMF)、世界銀行が電話会議を行い、新型コロナウイルス危機で大打撃を受けている貧困国への救済策を検討した。
国連はすでに、新型コロナウイルスのパンデミックによって、アフリカでは半数が失業するおそれがあると警告。また、発展途上国がこの危機を乗り切るためには2兆5000億ドルが必要になるとしている。
オックスファムは、世界全体に対して救済策を呼びかけたうえで、国際社会のリーダーは、国連の資金を集中投入して世界経済の崩壊を食い止めなくてはならないと述べた。資金調達の方法には、1兆ドル規模の債務即時取り消しや、1兆ドルに上るIMF特別引出権(国際準備資産)の積み増し、援助資金の増加、緊急の連帯税導入などがある。
新型コロナウイルスによる景気低迷の結果、収入が20%減となった場合に新たに貧困に陥る人数(地域別)