考察──「バレットジャーナル」は、SNS世代のセルフコントロールツール
MERY編集部 望月 菜穂子のコメント
バレットジャーナルの内容や女の子たちのコメントからは「自分と向き合い、高めていきたい」という前向きな気持ちが見て取れます。一方で、そのうしろにチラチラと、「ぐちゃぐちゃした気持ち」や「劣等感」というマイナスな気持ちも垣間見えるように思いました。
現代の女の子は、常にSNSで、友人・知人・同世代のインスタグラマーのキラキラした日常を浴びています。おしゃれなファッション、上質な暮らし、仲間たちとの楽しいひととき……。そんな情報を毎日シャワーのように浴びせられているわけですが、現実は、楽しいことばかりではありません。SNSの世界といつもの自分を比較してネガティブな感情に飲み込まれそうになってしまうことも、きっと少なくないことでしょう。
バレットジャーナルは、彼女たちにとって、そんな感情をコントロールするひとつの術になっているのではないかと感じました。「自己肯定感が低い」と言われる若者たちが、自己肯定感を維持し高める手段を見つけ、そして動き出した、前向きな変化の兆しだとも受け取れると思います。
また、“素敵な人”を目指すために、「ものに執着しすぎず、体験も重視するようになっている」というところもポイントです。パレットジャーナルを作る女の子は、外見も内面もどちらも磨きたいという意識が強めです。よって、自分のためにガツガツとブランド物をたくさん買うような行動を好みません。プチプラという言葉が浸透していることでもわかるように、彼女たちは手軽な価格で、自ら工夫して、いいものを手に入れたり、内側から自分を磨いたり、あらゆる体験を手に入れたいと考えているのです。
時間やお金が限られている中で、それらを最大限に活用し、より良い自分を目指すために、パレットジャーナルを活用しながらストイックな努力をし続けているのだろうと感じました。
その他、デジタルからアナログへの揺り戻しという側面もありそうです。ブログやSNSなど、多くのデジタルツールは、テンプレートの組み合わせで出来上がります。どう工夫しても「唯一無二のオリジナルコンテンツにはなりにくい」という意識があるようで、だからこそ、手書きというアナログのツールに回帰しているようにも見えました。
MERY世代の女の子が持つ真面目さや誠実さ、本物を大切にする気持ち、そして自己表現へのこだわりなど──。さまざまな要素によって支持されている「バレットジャーナル」。まだまだ、その流行は終わりそうにありません。
<ポイント>
・SNSの影響で他人と自分を比較しやすく、そのため、自分のことを理解し、理想のあり方を思考するようになってきた
・バレットジャーナルは「自己肯定感が低い」と言われる現代の若者たちの自己肯定感を維持し高める前向きな手段
・情報やモノがあふれる時代だからこそ、ものに執着しすぎず、体験も重視するようになっている