低金利と不安定な株式市場が、人気戦略を脅かしている
私は株式投資の大ファンだ。しかし端的に言って、リターンを得るには、以前よりも工夫が必要になっている。加えて、債券市場の苦境は一朝一夕には改善しない。だから今こそ、60/40のポートフォリオを過去のものにするべきだ。8トラックのカセットテープ・プレーヤー、電話ボックス、それに、レシピ変更前のマクドナルドのフライドポテトと同じように。
資産の60%を株式に、40%を債券に配分する、いわゆる「60/40」の投資ポートフォリオを動物に喩えるなら、それは間違いなく猫だろう。苦労して稼いだ多額のお金を投資するときの標準的な定番で、そこらじゅうに拡散し、過大評価され、過度に単純化されてきたこのアプローチは、このところ絶体絶命の状況だ。
なにしろ、金利は史上最低か、それに近い水準だ。したがって債券のリターンは、長期的に非常に低いプラスにとどまるか、あるいはマイナスに転落する可能性が高い。一方、株式の状況は異なる。こちらについてはもはや説明不要だろう。懸念しているのが弱気相場であれ、単なる「高いボラティリティ(変動性)」であれ、追い風を受けた好調なリターン(ありがとう、FRB!)が10年間にわたって続いてきた株式市場は、もう終わったのだ。
昨今の市場の推移をみれば、「伝統ある」60/40ポートフォリオ、あるいは、債券の割合の大きいあらゆる投資戦略から、私がずっと前に距離を置いた理由はわかるはずだ。
楽天的な60/40戦略の投資家なら、ここ5週間で「S&P 500」の株価が3割以上も落ちこんだことについて、「たかが」23%を失っただけだと強弁するだろう。
しかし、私が間違っていなければそれは、例えば元手が50万ドルなら、38万5000ドルまで減らしたということだ。それもたった5週間で! 退職者や、退職を控えた投資家のなかに、そんな可能性に手を出そうとする人はあまりいないだろう。
ここで、最もよく使われている債券インデックスの利回りを見てみよう。現在の値は約2.50%だが、ここには、 「ジャンク」に格下げされる可能性のあるBBB債が含まれている。債権市場が抱える問題は多すぎてここには書ききれないが、一言だけ言っておくと、低金利と信用の乏しさは最悪の組み合わせだ。