政府が雇用を守るためにつくったローンであるので、金を企業に渡してしまって別な用途に使われては困る。あくまで、新型コロナウイルスのために職を失った人を救済するためのものなので、雇用を維持することが債務放棄の条件なのだ。用途以外に使えば、それは免除されない。
このPPPとは、具体的には、事業者が最大、月次平均給与額の2.5倍の額を借り入れることができ、借入契約締結日から起算して8週間にわたる雇用が条件となる。事業上の財務状況の逼迫の如何は特に問題にはならない。極端な話、従業員を雇い続けるのならば、コロナの影響で儲かっている会社でも「コロナ不安」を主張すれば利用できる可能性がある。
一見、雇用調整助成金に似ているが、繰り返すように資金使途は厳格で、ローンの75%以上が給料支払いに使われているのでない場合には、債務免除はない。つまりあくまでローンであって、助成金ではない。
また、ローン発生時と同等の人件費を払っていることを想定しているものなので、もし人件費が25%以上減少(つまり解雇した)すると、債務免除額も割引される(全部免除してくれなくなる)ということだ。つまり、ひとことで言えば、「社長よ、社員をクビにするな! クビにしなければ金を貸したことを忘れてやる」という政府のツールなのだ。
窓口は政府でなく市中銀行
およそ金融機関は、貸し出す前の審査と貸してからの資金回収が融資の仕事の9割以上を占める。しかし、このローンのように、貸した後の使いみち(資金使途)をチェックすることが、担保設定や保証人、関連預金の確保以上に大切で、かつ最大のプライオリティになるという融資審査は金融界史上かつて存在したことがない。
そして、これを、貸主は政府(米国中小企業庁)であるにも関わらず、政府を窓口とせず、市中銀行を窓口にしていることも、行政を新型コロナ騒動でパンクさせないため、かつ、この金融支援のスピードを圧倒的に早いものにしているとして、好意的に評価されている。
カリフォルニアの大手銀行、カリフォルニアバンク・アンド・トラストのサイトを見ると、すでに申請フォームやQ&A集ができていて、オンライン申請も始まっているのがわかる。近々、ほぼすべての市中銀行も、この画期的ローンの取り扱いを開始するものと思われる。
ちなみに、仮に債務を免除されなくても、金利1%で、無担保無保証ローン、かつ6カ月は元本払い据え置きというのは、アメリカのSBAローン(日本でいう信用保証協会付き融資に似ている)では他にない。資金は35兆円。各銀行のサイトには、「早い者勝ち」と記載されている。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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