売上を落としたり、売掛を回収できなくなったりして危機を迎えている中小企業群に対して、政府として大規模なローンを企画し、法制化したが、この救済ローンは米国史上最大のものであるばかりか、おそらく世界でも行われたことのない、ユニークなローンとなった。
というのも、実はこれは、返済しなくてよい「ローン」なのだ。
雇用を維持することが返済不要の条件
この「返済不要」のローンは、税務当局や各金融機関への通達はほぼ終わっており(実質的な申し込み受付が金融機関によってまだ足並みが揃わないものの)、まもなく全米の金融機関で始まるものとみられている。
アメリカ経済が壊滅的な状況になりながらも、株価がまだ何とか踏みとどまっていられるのは、トランプ政権に対する経済界の最後の希望とも言える。さすがに3月までとは違い、アメリカ人が10万人単位で死亡することが統計的に見込まれ、強気のトランプ大統領さえそれを認めているこの危機に、感染問題を政治問題にすり替えて、ホワイトハウスを攻撃するような態様は、いまのところ民主党からは見られない。
おそらく11月の大統領選挙での対立候補となる民主党のジョー・バイデン元副大統領も、このほどトランプのコロナ対策に賛意を示した。出口の見えない経済危機と必死に戦っているアメリカでは、目下、この近年ない連帯意識が高まっている。
ジョー・バイデン元副大統領もトランプのコロナ対策に賛意を示している(Getty Images)
緊急経済対策は200兆円に上るもので、直接給付金とローン、間接給付の3本柱に分かれるが、失業保険対策や家賃補助、さらには航空業界などのさまざまな規模のセクターをカバーしている。
その施策のなかで最も注目されているのが、前述の返済不要のローンで、500人以下の中小企業事業者を対象に、総額で35兆円の枠をとったダイナミックなものだ。
その名も、PPP(Paycheck Protection Program)といい、 雇用保護プログラムとしてのローンで、言い換えれば中小企業が雇用を維持するための貸付金となる。そして、一定の条件を満たせば、債務放棄になる。