好きなことよりも「得意なこと」を。ある音楽家がグラミー賞候補になるまで

音楽プロデューサー starRo(スターロー)


──そういった淀みのない思考は、音楽活動にも生かされていますか?
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僕はいま、自分の音楽を商業的にとらえて勝負するのは、エネルギーと時間の無駄だと確信しています。でもそうすると、一般的な形でお金を稼ぐのが難しくなっていく。そこで初めて「じゃあ自分は商業レースから離れたところで音楽家になりたいから、お金の部分はどうしよう」っていう思考と真剣に向き合うことになるわけです。

それまでは「好きな音楽で稼ぎたい」というふわっとした考えだったけど、そういう思考を積み重ねて、どんどん自分の本質や自分のいる環境のからくりに気づいていく。

──ひとつひとつの経験、実感から自分自身の解像度、やるべき事の解像度がどんどん上がっているのですね。これからもっと明確になっていく余地はありますか?
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たくさんあると思いますよ。実は僕、新型コロナウイルスの影響で、本当に来月食えるか食えないかという状況なんです。だから、お金を稼ぐ為に必死で稼ぐことだけに集中することが最短の解決策なのですが、逆に、いまだからこそお金にならないことを一生懸命やっています。

そうすると、これまで分からなかった「お金になるポイント」に気づいたりする。たとえば、いま僕はnoteを書いて発信しているのですが、自分の経験を人に伝える過程でコミュニティが生まれて、それがお金になるようなことが生まれてくるかもしれないな、とか。



──いま、あらゆる前提が崩れていく不確定・不確実な社会に生きるstarRoさんは、ご自身の活動に関してどういうことを考えていますか?

何が起こるかわからないっていうのは、僕にとっては日常的。それが社会の共通のトピックとしていまここにあるというだけで、惑わされないようにしています。

いま食っていくために稼ぐ努力と、社会が変わった後で自分が何をしたいかを考える努力。これを両方同じぐらいやらなきゃいけないと思っていて、前提が崩れるとしたら、自分が目指す世界が作りやすくなる。そういう、未来の希望を見つけるべきだと思いますね。


スターロー◎音楽プロデューサー。2013年にジャネット・ジャクソンのリミックスがネット上で話題になったのをきっかけに、現在世界で最も注目されるレーベルSoulectionと契約。同年12月にリリースしたWhite Label EPは1カ月で24万回再生を記録し、それ以降オルタナR&B、Future Soulシーン内外から注目を浴び続ける。300万再生を記録したフランク・オーシャンのリミックスやDisclosure Remixなどのリミックスワークだけにとどまらず、インストトラック、シンガー・ラッパーをフィーチャーしたオリジナルソングの作曲、往年の名曲のカバーなど、制作スタイルも多岐にわたる。

文=長嶋太陽 写真=小田駿一

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